「本音を引き出す力」

誰しも、子どもや支援対象者、周りの大切な人。
そんな人の苦しさを「何とかしてあげたい」という想いで、関わっているはずです。

しっかり話を聞いて、共感して、安心して話せる場所をつくって、できる限りのことを精一杯やっている。

それなのに、話してくれない。何を考えているのか、わからない。

「今一歩が届かない感じ…」
「これ以上、どう関わったらいいの…?」
そんなふうに感じたことはありませんか?

深く聞けない、踏み込めない

支援職の方のみならず、子どもとの関わりや、身近な対人関係すべてに共通することかもしれません。
「苦しくさせてしまうかも…」
「また癇癪を起こされたらどうしよう」
「余計にこじれてしまったら…」

そんな不安から、“深く聞けない”という声をよく耳にします。

深く聞けないまま、当たり障りのない声かけや関わりになり、相手の本音や本当の課題には触れられない。何も解決されず、同じことの繰り返し…。
そうなると、お互いにモヤモヤが残り、変わらない現状に対する焦りや不信感、疲弊感がどんどん募っていきますよね。

 

「聞けない」行動の背景

“深く聞けない”という状態は、スキルの問題ではなく、関わる側の内面にある感情が関係していることが。

◆「深く聞けない」の構造の例

表に現れる行動・状態

背後にある感情や想い信念・思い込み
感情が動きそうになると話題を変える・切り上げる
例:「無理しなくていいよ」「今はやめとこうか」
・相手が泣いたり怒ったりするとどうしていいかわからない
・自分までしんどくなりそうで怖い
・背負いきれない感じがして怖い
・感情を出すのは悪いこと
・相手の苦しさ=自分のせい
・聞いたら何かしなきゃいけない
・中途半端な関わりは無意味
言いたいことがあるのに、“どう思われるか不安”で結局言えない
例:言葉を濁してしまう
・否定されたくない
・嫌われたくない
・相手の意にそぐわないと捨てられる
・相手にとって”いい人”でいないと求められない
相手の反応を見ながら言葉を選びすぎて、表面的な関わりに終始する
例:「どっちでもいいよ」「まあ、大丈夫だよね」
・何を言っても否定されそう
・不機嫌になったら怖い
・争いたくない
・雰囲気を悪くしてはいけない
・否定される自分には存在価値がない
・自分の気持ちを伝えるのはわがまま
・相手が不機嫌になるのは自分のせい

この思い込みが解消されると…

必要なことを、必要なタイミングで、”はっきりと聞ける・伝えられる”ようになります。

そして、
・感情が揺らいでいるときこそ「課題が出てきているサイン」だと捉えられる
・相手には「きっと乗り越えられる」という信頼感を持って関われるようになる

    でもその信頼や希望も、自分の中に不安があると、どうしても見えなくなってしまうのです。

     

    まずは自分の捉え方に”気づく”ことから



    まずは、自分の中にある感情や捉え方に目を向け、気づいていくこと

    捉え方が変わると、自分に対しても相手に対しても、これまで無意識に持っていた枠組みや思い込みを手放すことができるようになります。
    自分の想いに気づき受け入れられるようになると自然と相手に対しての見方も変わっていきます。

    ◆セッション事例

    ある40代の女性支援職の方。
    関わっている子どもや保護者がなかなか本音を話してくれず、
    いつも表面的なやりとりで終わってしまうことに悩まれていました。

    もう一歩で核心に届きそうなときも、
    相手の困惑した表情や沈黙に触れると、「これ以上聞いていいのか…」と躊躇してしまう。

    余計に辛い思いをさせてしまうかもしれない…」
    「せっかく落ち着いてきたのに、また悪化させてしまったらどうしよう…」

    “深く聞く”ことへブレーキをかけてしまっていました。

     

    ◆「深く関わることへの怖さ」


    自分が踏み込むことで、相手を傷つけてしまうのではないか・状態を悪化させてしまうのではないかという恐れが奥にありました。

    「ここに来たらきっと何とかなる」と思って来てくれたのに、かえって苦しませてしまったら…その期待に応えられない自分を責めてしまう。

    だからこそ、

      ・必要な時にちゃんとケアできないと、取り返しのつかないことになる<焦り>
      ・期待に応えられない <罪悪感>
      ・自分の役割を果たし切れていない <無力感>

      これらの想いが積み重なって、
      ”あと一歩のところで聞けなくなる”という現象を引き起こしていたのです。

       

      ◆無力感がつくる“守りの関わり”

      この無力感が奥にあるままだと、
      自分が「傷つかないように」「責められないように」
      つまり、自分自身が“無力感を感じなくて済むように”無意識で自分を守る行動に。

      たとえば、

        ・問題が起きないように表面的な関わりしかしない

        ・相手の反応を見て無難な言葉だけを使う

        ・沈黙や涙に動揺して、すぐに話題を変える

         こうした行動は一見「慎重さ」や「配慮」のようにも見えますが、
        実は、自分の“できていない”を見ないようにする自分自身への無意識下での防衛反応でもあります。

        結果的に…

          ・相手の問題が全部自分の責任に見えてくる
          ・少しでもうまくいかないと「自分が足りなかった」と思ってしまう
          ・「できない自分」「相手をかえられない自分」を許せなくなる

          そしてさらに深く関わることが怖くなる
          このループが、うまくいかない感覚・苦しさの悪循環につながってしまいます。

           

          ◆悩みの本質「当たり前のことができない無力感」

          本当は、「もう少し話を聞いてみたい」「相手が何を感じているのか知りたい」「ここで手を差し伸べたい」

            そんな想いがあっても、身体が動かない。言葉が出てこない。
            そのたびに、「またできなかった」と自分を責めてしまう。

            そして次第に、踏み込まない・求めすぎない・感情に触れないことが、自分を守るための関わり方になっていく。

              でもそれでは、相手の「助けてほしい」という小さなサインも
              自分の「届けたい想い」も、すれ違ったままになってしまう。

               

              ◆ 無力感の背景



              この無力感には、過去にこんなエピソードがありました。

              自分は4人家族で育った。
              でも二人目を出産後、思っていた以上に大変で…
              自分の母は、私を当たり前のように育ててくれた。
              世の中には普通に4人家族の家がたくさんあるのに…
              みんなができていることが、自分にはできない。
              “私の努力が足りないから” “私がダメだから”
              そんなふうに自分を責めて、すごく苦しかった。
              周りがみんな、敵に見えてました。

              このとき、「母親として、当たり前のことができない自分はダメな母親だ」という深い無力感を感じていました。

              そしてこの無力感によって、
              「ちゃんとした母親をやらなきゃ」
              「ちゃんとできない私はダメ」
              「ダメな私は見せられない」

                そんな思いが強くなり、自分に厳しくなるだけでなく、周囲に対しても「ちゃんとしていない人が許せない」といった過剰な役割意識厳しさが生まれていました。

                ◆違う視点からとらえられる様に



                「周りが敵に見えていたけど、本当は…
                “うまくできない自分自身”を受け入れられなかったんですね」

                 

                 ◎ 無力感があったからこそ、できていたこと・頑張れていたこと

                  ・子どもや家族を大切にしようと、全力で向き合ってきた
                  ・どうにか良くしたいと、工夫や努力を続けてきた
                  ・苦手なことにも「できるようになろう」と挑み続けてきた
                  ・「ちゃんとしたい」という気持ちが、学びや成長の原動力になっていた

                  ◎苦しさにつながっていたこと

                    ・“当たり前ができない自分”を責めてしまう
                    ・他人と比べて落ち込みやすくなる
                    ・自分を許せない分、周囲にも厳しくなってしまう
                    ・「できていない部分」を見せられず、助けも求めづらい

                    ここに気づけたからこそ、
                    これまでとは違う視点、“他の捉え方”にも少しずつ目を向けられるようになっていきました。

                    「“当たり前”って、そもそも誰の基準なんだろう?」
                    「自分にとって本当に大切にしたいことって、何だったんだろう?」

                    できていないことばかりに目が向いていたけれど、振り返ってみると不器用ながらも一生懸命やっていたこと誰にも見せずに頑張ってきたこと、ちゃんと“できていたこと”もたくさんあったのです。

                     

                    ◆ 言葉にできなかった想いを引き出せるように



                    後日、その方がこんなお話を聞かせてくださいました。

                    クライアントさんの様子から、何か言葉を飲み込んでいるように感じたとき、
                    「今飲み込んだ言葉、そのまま聞かせてくれませんか?」と、自然と声をかけられました。
                    なんか、大丈夫って思えたんです。

                    それまで止まっていた流れが少しずつ動き出した感じで、
                    「実はずっと…」と、これまで聞けなかった本音を少しずつ話してくれるようになって。
                    もしかしたら相手も聞いてくれるのを待っていたのかもしれません。

                    自分も相手も「大丈夫」と思えるようになったからこそ、

                      ・聞きたいことをはっきり聞ける
                      ・伝えるべきことはしっかり伝える

                      そんな関わりができるようになり、しっかりと一緒に課題に向き合っていけるようになりました。

                      支援する側に「聞いてもいいのかな…?」という迷いや不安があると、それは言葉にしなくても、相手に伝わってしまいます。
                      だからこそ、支援者自身が「大丈夫」と心から感じていることが、相手にとっての「話しても大丈夫」の安心の土台を育てていくのだと思います。

                       

                      支援者自身が、心の底から“安心・信頼・希望”を持って関われること――
                      それこそが、本当の意味での「安心して話せる場所づくり」なのかもしれません。

                       

                      ◆「自分自身と向き合うことの大切さ」

                      「うまく関われない」「限界を感じる」
                      そんな違和感は、誰かと本気で向き合っている証かもしれません。

                      だからこそ、まずはご自身の内側へ目を向けてみてほしいのです。

                      たくさんのクライアントさんやその周りの方々の変化を一緒に見させていただき、
                      自分自身の感情や想いを受け入れることで、自然と相手への見方もかわってくるのだと日々実感しています。

                      そして深層、根本へ届く支援へ繋がっていく。


                      「大丈夫」の安心感を、まずは自分自身に。
                      ここが相手の「本音を引き出す力」になっていくのです。

                      カウンセリングでは変わらない・認知や思考のクセを修正し、繰り返す問題を断ち切る。

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