近年、保育や企業、教育現場でも重視されている「カウンセリングマインド」。
相手の感情や考えを深く理解し、自己解決力を引き出すために役立ちます。
この記事では「カウンセリングマインド」の4つの基本姿勢とメリットをわかりやすく解説。活用例についてもご紹介します。
カウンセリングマインドを身につければコミュニケーションスキルが向上し、対人関係が今より円滑になるでしょう。
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目次
【カウンセリングマインド4つの基本姿勢】メリットと活用事例
- カウンセリングマインドを簡単にいうと?
- カウンセリングマインド【4つの基本姿勢】
- カウンセリングマインドがもたらす4つのメリット
- カウンセリングマインドが活用される場面と事例
- カウンセリングマインドで根本からの解決を目指すなら
カウンセリングマインドを簡単にいうと?
カウンセリングマインドとは、カウンセリングの専門家でない人がその理論や技法を教育現場、育児、職場などで活かす心得を指します。
人は本来、自分で悩みを解決したり目標に向けて行動できる力を持っています。
その力がストレスや刷り込まれた価値観など、なんらかの要因でうまく発揮されないことは誰しもあることです。
カウンセリングは、そういった人たちの行動変容を手助けする手法です。
カウンセリングマインドをうまく活用すれば、相手の自己解決力を引き出せます。
カウンセリングマインド【4つの基本姿勢】

カウンセリングマインドで相手と向き合うときに必要な姿勢を、以下の4つに分けて解説します。
- 観察
- 傾聴
- 確認
- 共感
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
基本姿勢その1.【観察】
観察とは、相手の表情やしぐさ、視線、声のトーンなどあらゆる情報に注意しながら話を聞くこと。
心身一如ということばがあるように、体の動きは心の動きを反映するといわれています。
観察しながら話を聞いていると、その背後にある感情を読み取ることができます。
人は想像以上に、自分で自分のことが分からないものです。
聞き手が観察することで、話し手本人が気づいていない感情に気づくことも多々あります。
観察するときは自分の先入観を手放して相手をよく見るのがポイントです。
基本姿勢その2.【傾聴】
傾聴を辞書で調べると、以下のような解説が出てきます。
“耳を傾けて、熱心に聞くこと”
引用元:goo辞書
ですが、カウンセリングでいう傾聴はこの範ちゅうにとどまりません。
カウンセリングマインドに必要な傾聴とは、相手の言葉の裏にある本当の感情にまで目を向けながらより深く理解することです。
そのために必要なのが、自分の心の壁を取り除き相手の話を聞くこと。
つまり、自分の反論や批判、同調の気持ちはいったん脇に置いて相手の話をありのまま受け止めるということです。
善悪や正しいかどうかの判断は、相手の言葉の背景や奥の気持ちを聞き取る妨げになります。
また話を聞くときは、うなづきや「〜と感じるんですね」などの受け止めの言葉も丁寧かつ積極的に添えながら耳を傾けます。
傾聴がうまくできると、相手にも「聞いてもらえた」という安心感が生まれ本音を引き出しやすくなるでしょう。
同時に信頼関係が生まれるので、こちらの提案や伝えたいことも相手に伝わりやすくなる効果があります。
基本姿勢その3.【確認】
確認とは、言葉の意味や感情を明確にする姿勢です。
聞き手は話を聞きながらポイントを繰り返したり質問したり、要約しながら話し手の心の整理を手伝います。
また相手がかすかに言った言葉を繰り返すことで、話し手が「自分のことばが届いている」と実感し、自信を持って話せることもあります。
話し手は自分の話をうまく表現できなかったり、自分の感情に気づいていないことがほとんどです。
確認によって感情を明確化し続けると、話し手が自分の気持ちに気づき、問題解決の方法を見つけやすくなるでしょう。
基本姿勢その4.【共感】
カウンセリングマインドでいう共感とは、同情や同調という意味の共感ではなく、また肯定することでもありません。
自分の価値観や判断は挟まず、ただありのままの現状をそのまま受け止めるということです。「共感的理解」といわれることもあります。
たとえば相手が「親が許せない」と話したとしましょう。
自分の心に「世話になっておいて、そんなことを言うなんて」という感情が生まれたとしても、それにより相手を説得しようとすると共感は失敗です。
自分の感情が浮かぶのはしかたのないことですが「自分は今こう思っているんだな」と俯瞰(ふかん)し、脇に置いておきましょう。
本当の意味での共感ができると、相手がどんな価値観や思いでその行動や悩みに至っているのかを自由に話せるようになり、隠れた本音を引き出しやすくなります。
共感を土台に一緒に解決策を考えることで、相手の行動変容も促進できるでしょう。
カウンセリングマインドがもたらす4つのメリット
カウンセリングマインドは、相手だけでなく自分にも大きなメリットをもたらしてくれます。
おもなメリットを以下4つに分けて詳しくお話します。
- 深い人間関係が構築できる
- 自己解決力を引き出せる
- コミュニケーション力が向上する
- 自分の成長にもつながる
1)深い人間関係が構築できる
カウンセリングマインドでは、自分の価値基準を挟むことなくただありのままに相手の話を聞くことが求められます。
人間には「自分のことを正しく理解して欲しい」という根源的な欲求があります。
自分が今の悩みに至った原因や思いが相手に届いたと実感すると、相手に対する信頼感が高まり自己開示がしやすくなりますよね。
その結果、よりオープンで正直にコミュニケーションが取れて深い人間関係が築けます。
2)自己解決力を引き出せる
カウンセリングマインドの目的ともいえるのが、自己解決力を引き出すことです。
心の辛さはほとんどの場合、本人にしか解決できません。
なぜなら苦痛の元になる感情は人それぞれなので、対処法も人によって異なるからです。
ただ、それに自分ひとりで気づくのはなかなか難しいもの。
ほとんどの場合は、一緒になって考えてくれる人が必要です。
聞き手がカウンセリングマインドを活用すれば、話し手が自分でも気付けなかった、あるいは認めたくなかった感情を発見できます。
話し手が自分の思考を客観的にとらえられるので、自分でどう対処するかを考える手助けとなります。
3)コミュニケーション力が向上する
カウセリングマインドをもって話を聞くとき、自分の価値観からくる感情を手放す必要があります。
自分の価値基準を手放せたら、他者の価値観も受け入れやすくなり感情的な対立が減ります。
すると、冷静で客観的なコミュニケーションがとれるようになります。
とはいえ、自然にわきあがる感情を脇に置いておくのは簡単ではありません。
繰り返し心がけることで、徐々に自分の感情を俯瞰(ふかん)して見られるようになってくるでしょう。
4)自分の成長にもつながる
カウンセリングマインドを意識したコミュニケーションが取れるようになると、自分自身を振り返る機会も増えます。
相手を理解しようとする過程で、自分の考え方や感情にも気づきやすくなるからです。
その結果、自己成長につながるといったメリットがあります。
カウンセリングマインドが活用される場面と事例

カウンセリングマインドは、おもに以下の場面で活用されています。
- 保育の現場
- 教育の現場
- 企業
- 子育て
それぞれの場面でどのように活用しているのか、具体例を見ていきましょう。
1)保育現場での活用例
保育現場でカウンセリングマインドを活用すると、子どもの情緒の安定や健全な人間関係の構築を手助けできます。
幼い子どもは自己表現や感情コントロールが未発達なので、保育士がカウンセリングマインドをもって接することが重要です。
【例1】子どもが泣き始めたとき
すぐに抱きしめたり、そばに座ったりして「大丈夫だよ、何か不安なのかな?」と声かけをする。
言葉が出なくても、ただ泣いている子どもの感情を認め「怖いのかな?ママと離れるのが寂しいのかな?」と子どもが抱えていそうな思いを言語化し、認識をすりあわせる。
【例2】子ども同士がケンカしたとき
保育士は「悲しかったね」「怒っているんだね」と代わりに感情を言葉にしてあげ、子どもがその感情を認識できるようにする。
感情が明確になり、子どもの心に安心感が芽生えます。
2)教育現場での活用例
教育の現場でカウンセリングマインドを活用すると、教師が生徒の気持ちや感情を共感的に理解し、信頼関係が深まります。
生徒の自発性をサポートし成長を支え、健全な学習環境を作り出すことが目的です。
【例】友人から避けられていると悩む生徒への声かけ
教師は生徒の非を責めたり気のせいだと決めつけずに「〜さんに避けられていると感じているんだね」と、現状をそのまま受け取る。
「話そうと思ったらすっといなくなって、寂しかったんだね」と感情の明確化。
「どうしたらいいか、一緒に考えてみよう」と生徒の行動変容をサポートする。
これにより教師と生徒の信頼関係が深まり、生徒の自己解決力を引き出せます。
3)企業での活用例
企業でのカウンセリングマインドの活用は、組織の円滑な運営やチームの生産性向上に有効です。
ストレスで業務に支障をきたしている部下が相談しやすい環境を整え、自己解決を促します。
【例】部下のミスが発覚したとき
上司はミスを頭ごなしに叱責するのでなく、部下の状況や感情を理解する姿勢に努める。
部下の現状の受け止め方を引き出し、何につまづいているのかを一緒に整理する。そのうえで、部下が自分で解決策を見つける手助けをしながら、一緒に改善策を考える。
これにより、部下は上司に対する信頼感を持ち、その後も安心して業務に取り組むことができます。
4)子育てへの活用例
子育てにおけるカウンセリングマインドの活用は、子どもの健全な成長を支えるのに効果的です。
親が子どもの気持ちに寄り添い、共感しながらサポートすれば、子どもは安心感を得て自己肯定感や社会性が育ちます。
【例】きょうだいゲンカ
親は「〇〇くんは、どうしてそんなに怒ったの?」と、それぞれの立場を理解するように努める。
感情的にならず「どうしてそんなに怒っているのか教えてくれる?」と問いかけ、子どもが自分の気持ちを整理できるように促す。
子どもが理由を話し始めたら、親も子どもの受け取り方を一緒に整理する。
それを踏まえ「どうしたらうまく解決できるか、一緒に考えてみよう」と提案。
そうすることで、子どもが主体的に解決策を見つけられるようサポートできます。
カウンセリングマインドで根本からの解決を目指すなら

本記事でご紹介したカウンセリングマインドは、あくまでも基本的な姿勢です。
相手の悩みを根本から解消するには、さらに踏み込んだアプローチが必要になります。
悩みの根本の原因は、その行動に至った「価値観」や「思い込み」にあります。
そこまで踏み込むには、話を聞く側が相談者本人も気づいていない心のフタを開けながら深堀りしていく技術が必要です。
根本の解消により悩みが再発しにくく、再発しても対処法がわかるので自己解決できるメリットがあります。
スクールカウンセラーや産業カウンセラー、保育士や看護師などの対人支援の現場や親子関係においても、悩みを根本から解決したい方は深堀りの技術を学んでみるとよいでしょう。
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この記事を書いた人:オガミ キヨ

メンタルセラピスト×Webライターとして活動中。 執筆ジャンルは健康、心理学をはじめ多岐にわたる。 個別セッション・お仕事のご依頼はInstagramか、以下リンク先より承っております。
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