「クライエントに共感しすぎて客観的に話を聞けなくなる」
「自分の感情がコントロールできなくなる」
「カウンセリング後に疲れ果ててしまう」
など、相談者の感情に引きずられて悩むカウンセラーは少なくありません。
本記事では、カウンセラーがクライエントの感情に引きずられる原因と対策、引きずられてしまった時の対処法まで解説しています。
カウンセラーがクライエントの感情に引きずられてしまうと、カウンセラー自身の疲労やストレスが蓄積します。その結果、支援の質が低下するデメリットも……
記事を読めば感情に引きずられるリスクを減らし、質の高いカウンセリングを提供できるでしょう。
目次
1.カウンセラーがクライエントの感情に引きずられる3つの理由
3.カウンセリング中にクライエントの感情に引きずられてしまった時の対処法
4.クライエントに引きずられないために無料カウンセリングをご活用ください
カウンセラーがクライエントの感情に引きずられる3つの理由
まずは、引きずられる主な原因を以下3つに分けて解説します。
- 感情の転移
- 感情の逆転移
- 共感疲労
1)感情の転移
感情の転移とは、クライエントが過去の重要な人物に対する感情をカウンセラーに投影することです。
たとえば、厳しい父親に育てられたクライエントがカウンセラーの指摘を「父親からの批判」と感じることがあります。その結果、無意識に反抗的になったり萎縮してしまうケースがあります。
このように感情の転移が起こると、カウンセラーがクライエントの感情に巻き込まれやすくなるのです。
2)感情の逆転移
感情の逆転移とは、カウンセラーがクライエントに対して個人的な感情を投影することです。
カウンセラー自身も、自分の過去の経験や感情をクライエントに投影することがあるもの。
多くの場合、カウンセラーの個人的な経験や未解決の問題が影響を与えています。
たとえば、カウンセラーが自分の失恋経験をクライエントに重ね、必要以上に感情移入してしまうケースなどが一例としてあげられます。
感情の逆転移が起こるとカウンセラーは客観性を失い、支援の質が低下する可能性があります。
3)共感疲労
共感疲労とは、他人の感情や苦痛に過度に共感することで生じる精神的・身体的な疲労です。
長期的に放置すると、うつ病や燃え尽き症候群につながるリスクがあります。
特にカウンセラーのような支援職では、注意が必要です。
疲労は溜め込まず、こまめに解消しましょう。
次にご紹介する対策法も参考にしてみてくださいね。
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カウンセリングで引きずられないための対策4選
次に、カウンセラーがクライエントの感情に引きずられないための対策を以下4つに絞りお伝えします。
- クライエントとの境界線を保つ
- 同調と共感を切り分ける
- カウンセラー自身のメンタルケアを怠らない
- 同業者からフィードバックを受ける
対策【1】クライエントとの境界線を保つ
カウンセラーは、クライエントとのプロフェッショナルな境界を明確にすることが重要です。
たとえば、以下のような対策が効果的です。
- 明確なルール設定(時間・料金・キャンセルポリシーなど)
- カウンセリング終了後の意識の切り替え
- 「クライエントとのつながりを断ち切るイメージ」を持つ
ルールを厳守することで、クライエントとの関係が過度に親密になるリスクを防ぎます。
またクライエントがカウンセラーを中立的な立場として見られるよう、クライエントの個人的な情報も必要以上に共有しないよう心がけましょう。
カウンセリング終了後は、クライエントに向けていた意識を断ち切ることも不可欠です。
いつまでもクライエントのことを考えていると、明確な境界線があいまいになってしまいます。
対策【2】同調と共感を切り分ける
同調(相手の感情と同じように感じること)は避け、共感(相手を理解しつつ客観性を保つこと)を心がけましょう。
正しい共感とは、相手の話に自分の価値観や判断は挟まず、ただありのままの現状をそのまま受け止めることです。
このほか「私の理解は合っていますか?」とクライエントに確認するのも、客観的な視点を保ちつつ共感を示す効果的な方法です。
対策【3】カウンセラー自身のメンタルケアを怠らない
カウンセラーは日常的にマインドフルネスや瞑想を取り入れ、感情を客観視する習慣をつけましょう。
以下はマインドフルネスの一例です。
試しに実践してみて、自分に合う方法を見つけるとよいでしょう。
・呼吸に意識を向ける
1)静かな場所に座り、目を閉じる
2)背筋を伸ばし、肩の力を抜いてリラックス
3)ゆっくりと深呼吸をします。息を吸うときに鼻から空気が入る感覚を意識し、息を吐くときに身体がリラックスする感覚に集中
4)思考がよぎった場合は、それを否定せず「今、思考が浮かんだ」と気づいたうえで、呼吸に意識を戻す
・歩き瞑想
1)ゆっくりと歩きながら、足裏が地面に触れる感覚や体の重心が変化する動きを意識
2)一歩一歩を丁寧に感じ、目の前の風景や音にも注意を向ける
3)頭の中が散漫になった場合は、「今歩いている」という事実に意識を戻しましょう
・ジャーナリング
1)5分から10分の時間を取り、自分が感じていることや考えていることを紙に書き出す
2)書く内容に対して批判や判断をせず、ただその瞬間の自分の内面を観察し、記録
・アーシング
1)靴を脱いで裸足で草や砂浜、土の上に立つか座る
2)足裏や肌で感じる地面の感触、温度、質感に意識を向ける
3)自然の音(鳥の声、風の音、波の音など)を聞き、環境に溶け込む感覚を持つ
4)ゆっくり深呼吸をし、息を吸うときに「エネルギーが体に満ちる」とイメージし、息を吐くときに「不要な緊張が地面に流れる」と想像する
対策【4】同業者からフィードバックを受ける
カウンセリング終了後、信頼できる同僚や他の専門家からのフィードバックを受けると感情が整理され、冷静さを保ちやすくなります。
同業者同士で、定期的にカウンセリングをし合うのもおすすめです。
心のブロックが外れ、カウンセリングの質が向上します。
自分自身のメンタルヘルスを守るために、専門家の助けを借りることをためらわないようにしましょう。
カウンセリング中にクライエントの感情に引きずられてしまった時の対処法
カウンセラーがどれだけ感情に引きずられないよう気を付けていても、話を聞く過程でどうしても引きずられてしまうこともあるでしょう。
ここからは、カウンセリング中でもできる対処法を以下の順にお伝えします。
- 感情の「お裾分け」と捉える
- 感情を受容する
- 深呼吸や瞑想をする
- 質問を利用する
- 目的を再確認する
1)感情の「お裾分け」と捉える
クライエントから受け取った感情を「お裾分けされた感情」と捉えてみましょう。
たとえばお裾分けされた感情を一時的に自分の中で受け止め、「彼が感じている怒りにはこんな背景がありそうだ」と分析的に捉えます。
客観性を保ちながらクライエントの感情を理解できるため、適切にアプローチしやすくなります。
2)感情を受容する
感情は湧き上がってしまったら、抑え込もうとすればするほど感じてしまうもの。
カウンセリング中に感じる自分のどんな感情も否定せず、まずは受け入れることが大切です。
そのうえで「自分は今こう考えているんだな」と客観的に味わい、手放してみましょう。
客観的に受け入れると、冷静さを取り戻す手助けになります。
3)深呼吸や瞑想をする
カウンセリング中に深呼吸や、(可能であれば)短い瞑想をおこなうと、心を落ち着かせられます。
深呼吸や瞑想により呼吸がゆっくり深くなると、副交感神経が優位になるからです。
その結果、感情の高まりを抑え、冷静さを取り戻せる効果があります。
4)質問を利用する
クライエントに対して質問を投げかけることで、話の焦点をクライエントに戻せます。
たとえば「その時、どのように感じましたか?」といった質問が効果的です。
質問により、自分の感情から距離を置けます。
5)目的を再確認する
カウンセリングの明確な目的や目標を設定し、それに基づいて進行すると感情的な偏りを防ぐ効果があります。
クライエントの感情に引きずられそうになったら、セッションの目的を思い出します。
クライエントの成長をサポートするために自分が何をするべきかを再確認すれば、冷静さを取り戻す一助になるでしょう。
クライエントに引きずられないために無料カウンセリングをご活用ください
カウンセラーがクライエントの感情に引きずられてしまった場合、同業者のサポートを受ければストレスを減らし新たな気持ちで次のカウンセリングに向き合えます。
もし周りにカウンセリングをお願いできる同僚や先輩がいないのであれば、ぜひ当協会の無料セッションをご活用ください。3回まで無料でご利用いただけます。
ほかにも、カウンセラー向けのサポートをおこなうセラピストによる無料セッション付きの体験講座を開催しています。認知行動療法をベースとした、深堀りのスキルを学んでみたいかたにもオススメです。
カウンセラー自身がメンタルケアを取り入れることで、カウンセリングの質が向上し、結果的にクライエントにとってもプラスになるでしょう。