「共感」という言葉を耳にしたとき、あなたはどんな印象を抱きますか?多くの人が「大変だったね」「つらいよね」といった表面的な言葉を想像するかもしれません。しかし、真の共感はその一歩先にあります。それは相手の感情を自分のフィルターを外して、その人の視点で深く理解し、寄り添うことなのです。
共感の本質とは?

例えば、モラハラに悩む女性が「夫に毎日否定されている」と打ち明けた場合の対応を考えてみましょう。
- 表面的な共感:「それは大変でしたね。苦しいですよね。」
- 真の共感:「毎日否定され続けると、感情が揺れ動きますよね。今、どんな感情ですか?どんなふうに感じていますか?」
大切なのは、自分の価値観や経験を押し付けないこと。そして、相手の感情に同調するのではなく、ただ純粋に理解しようとする姿勢を持つことです。多くのカウンセラーが、無意識に相手の状況に自分の感情を投影してしまいます。しかし、本当に必要なのは、クライエントの感情に耳を傾け、その人が抱えている悩みを共に感じることです。
同調は問題を悪化させることがある
同調は必ずしも解決に繋がるわけではありません。むしろ、表面的な同調がクライエントの問題を悪化させることがあります。
- 例えば:「それは本当にひどいですね」「つらいですよね」と繰り返し同調すると、クライエントは自分の考えが正しいと感じ、状況に対して固執してしまいます。
トラブルやメンタル不調の根本原因の多くは、「認知の歪み」や「偏り」によるものです。過度な同調や肯定は、その歪んだ認知をさらに強化することになります。これが、問題解決を遠ざける原因になるのです。
深い共感のために必要な3つのポイント
- 感情をそのまま受け入れる
相手の感情を判断せずに、ありのままに受け入れ、「そう感じているんだね」と受け入れることが大切です。 - 理解しようとする姿勢を示す
ただ相手の話を聞くだけでなく、「なぜそう感じるのか?」という純粋な好奇心を持って聴く姿勢が重要です。 - 解決を急がない
「こうすればいい」とすぐに答えを出すのではなく、「今、どうしたいと思っているの?」と相手の意志を尊重し、解決策を共に模索することが大切です。
さらに、クライエントが言葉にしている表面的な言葉の裏に潜む感情に注目し、その感情に寄り添っていくことがポイントです。たいていの場合、人は強いネガティブな感情を表に出しにくいため、言葉ではなく、その裏に隠された感情に焦点を当てて聞くことが、効果的な共感につながります。
偽りの共感に注意
以下のような「偽りの共感」には注意が必要です。
❌ 「私も同じ経験したから分かる!」
→ これは自分の経験に置き換えて同調しているだけです。相手の感情を理解しているわけではありません。
❌ 「そんなの気にしなくていい!」
→ 相手の感情を否定することで、クライエントの孤独感やネガティブな感情が深まります。
❌ 「分かるけど、でも…」
→ 「でも」の後のアドバイスは共感を台無しにし、相手の心の扉を閉ざすことになります。
カウンセラーが先回りしてアドバイスをすると、クライエントの心は閉ざされてしまい、行動できなくなってしまいます。共感の力を最大限に発揮するためには、まず相手の認知の偏りを見つけ、俯瞰して状況を理解することが必要です。それができて初めて、クライエントはアドバイスを受け入れる準備が整うのです。
真の共感が心の扉を開く

本当の共感とは、単に「分かる」と言うことではなく、「一緒に感じる」ことです。相手が「本当に私のことを理解しようとしてくれている」と感じたとき、初めて心を開いてくれるのです。共感は相手の心を解放し、解決への第一歩を踏み出す力を持っています。
ワンポイントアドバイス
次に誰かの話を聞くとき、言葉そのものではなく、その言葉に込められた「感情」に焦点を当ててみてください。
「この人はどんな気持ちなのだろう?」と想像するだけで、相手との距離がぐっと縮まります。