「誰かの役に立つ仕事がしたい」
副業や起業、これからの働き方を考えたときに、そう思う方はとても多いです。
もちろん、その気持ち自体は悪いものではありません。
でも私は、この言葉は一見やさしく聞こえて、実はとても危うさも含んでいると思っています。
なぜなら、仕事は本来、どれも誰かの役に立っているものだからです。
役に立っているからこそ、対価としてお金をいただくことができる。
にもかかわらず、あえて「人の役に立ちたい」と強く思うとき、そこには別の願いが隠れていることがあります。
それは、 「ありがとうと言ってもらいたい」 「自分の行動が正しかったと思いたい」 「認められたい」 「存在意義を感じたい」 そんな気持ちです。
これらは決して悪いものではありません。
でも、ここに無自覚なまま仕事を選ぶと、少しずつ苦しくなっていきます。
「人の役に立つ」は、実は評価が曖昧
「人の役に立つ」という言葉は、とても聞こえがいいです。
でもよく考えると、ものすごく曖昧でもあります。
どこまでやったら役に立ったと言えるのか。
相手が満足したら十分なのか。
感謝されたら達成なのか。
成果が出たらなのか。
この基準が曖昧なままだと、人は「もう十分やった」と感じにくくなります。
すると脳は、「まだ足りない」「もっと与えなければ」と認識しやすくなる。
その結果、満たされにくくなり、終わりのない頑張り方に入ってしまうのです。
その先に起こりやすいこと

この状態が当たり前になると、起こりやすいのは次のようなことです。
バーンアウト。
自己犠牲。
共依存。
相手がどんどん依存してくる。
相手が自分で考えたり動こうとしなくなる。
自分はいつも疲れている。
なのに「役に立てていないかもしれない」と不安になる。
こうした関係性は、相手だけがつくっているのではありません。
自分自身の「もっと与えなければ」「ちゃんと役に立たなければ」という前提が、無意識に生み出していることもあります。
本当に見たほうがいいのは、その言葉の裏側
「人の役に立ちたい」という気持ちの裏には、いろんな本音が隠れていることがあります。
安心したい。
自信を持ちたい。
否定されたくない。
必要とされたい。
ちゃんと価値のある自分でいたい。
だから、つい人に与えすぎてしまう。
与えていない自分に不安になる。
疲れているのに、やめることに罪悪感を持ってしまう。
そして本当は、
「しんどい」
「苦しい」
「心からやりたいわけじゃない」
そう感じていることもある。
でも、その気持ちは外ではなかなか言いにくいものです。
まるで自分が冷たい人みたいに思えてしまうから。
でも、そう感じることは悪いことじゃない
私は、そう思ってしまうこと自体は悪いことではないと思っています。
むしろ大切なのは、
“そう思っていた自分に気づくこと” です。
違和感に気づく。
立ち止まる。
何に反応しているのかを見る。
この時間があることで、自分を必要以上に苦しめずに生きていく方法が少しずつ見つかっていきます。
働き方も同じです。
自分の中にあるモヤモヤや違和感を、なんとなく流さずに言語化していく。
俯瞰して見ていく。
そうすると、「自分の問題」と「相手の問題」を切り分けられるようになります。
多くの人は、無意識に外側に基準を置いています。
期待
責任
幸せ
行動
こういったものを、他人基準で測ってしまう。
すると、他人軸の生き方になっていくのです。
高梨子にとって、仕事の喜びは「ありがとう」ではない
私自身、仕事はすごく面白いものだと思っています。
だから、ストレス発散したいとか、旅行に行きたいとか、あまり思わないことがあります。
旅行に行くより、今これをやり切りたい。
そんなふうに思うことが多いです。
もちろん、人によっては基準が違うと思います。
私は長くブラックな環境で働いてきたこともあって、仕事量に対する感覚は人より独特かもしれません。
それでも、今の私はものすごく満足感を感じながら働いています。
それは、「ありがとう」と言ってもらえるからではありません。
実は私は、その反応そのものにはあまり興味がないんです。
私がうれしいのは、自分が何かを伝えたときに、相手が「ハッ」とする瞬間。
見え方が変わる。
自分のことを理解する。
何かがつながる。
その瞬間がたまらなく好きで、その瞬間をつくりたくて、私はずっと学んでいます。
相談、カウンセリング。
セミナー、研修。
コンサルティング。
情報提供、発信。
形はいろいろでも、やっていることは同じ。
相手や自分の中で、何かが「つながる瞬間」をつくりたいだけ。
言い換えれば、私は自分の喜びのために、とことん探求しているのだと思います。
だから楽しいし、続けられるのです。
そして結果として、私の行動が誰かの喜びや変化、人生のきっかけにつながることがある。
だから仕事としても成り立っています。
結果だけで見たら、相手のためになることを仕事にしたことと同じではあるけど、本質を見た時には自分の楽しいを仕事にしたという順番が異なるのです。
仕事を支えるのは、“自分の軸”のある探求

こういう仕事のつくり方には、限界がありません。
世の中にはたくさんの情報があって、たくさんの業界があって、たくさんの分野があります。
知識も経験も、全部を完了することなんてできません。それが人それぞれいびつですよね。
だからこそ、どこまでも深めていける。
組み合わせ方も、届け方も無限にある。
この感覚があると、年齢を重ねても仕事を生み出していくことができます。
時代が変わっても、立ち直る柔軟さを持てます。
そしてそれが、自信にもつながっていく。
そのために必要なのが、自分自身の「軸」です。
自分が心の底から楽しいと思えることは何か。
自分はどんな瞬間に喜びを感じるのか。
何をしていると、時間を忘れてしまうのか。
ここを、とことん追求していくことが大切なのだと思います。
自分軸をつくるには、まずモヤモヤを分解する
ただ、自分軸を見つけようとしても、すぐにわからないこともあります。
そんなときは、いきなり「やりたいことは何?」と考えるより、
今のモヤモヤを分解すること のほうが早いです。
自分のモヤモヤを整理する流れとして、
- 苦手・嫌・難しい・ストレスに感じることを書き出す
- その具体的な状況を見ていく
- そこにある解釈や捉え方を複数出す
- ひとつ選んで深掘りする
- 避けたい未来や感情を見る
- できていたこと/できていなかったことを事実として分ける
これは、自分の反応を「感情」だけで終わらせず、構造で見ていくための整理になります。
こんなふうに問いかけてみてください
もし今、何かやりたいことがあるなら、まずは次の問いを書き出してみてください。
- それをやりたいと思うのは、なぜ?
- それができたら、何が満たされると思っている?
- できなかったら、何が怖い?
- 誰に認めてほしいと思っている?
- それは本当に、その方法でしか叶わない?
- それは不足を埋めたい選択?
- それとも、ワクワクから広がる選択?
資料のワークでも、解釈を深掘りし、避けたい未来や感情を見て、最後に「できていた事/できていなかった事」を事実として分ける構成になっていました。感情だけで自分を裁かず、整理して見直す視点が入っているのが特徴です。
やりたい理由は「不足」ベースか、「ワクワク」ベースか

やりたいと思っていることがあったとき、ぜひ見てほしいのは、
その選択は不足ベースなのか、ワクワクベースなのか
という視点です。
不足ベースの選択は、
不安を消したい
認められたい
自信を埋めたい
置いていかれたくない
そんな気持ちから始まりやすいです。
一方でワクワクベースの選択は、
面白い
知りたい
やってみたい
深めたい
という、自分の内側のエネルギーから始まります。
不足ベースが悪いわけではありません。
でも、それに気づかないままだと、選択がどんどん苦しくなります。
逆に、不足をひとつずつ見ていけるようになると、
「これをしなきゃ叶わない」と思っていたことが、別の方法でも満たせると気づけるようになります。
例えば、副業・起業したいという理由を考えてみると

不足ベースの動機で仕事を選ぶと、自分の感情が置いてけぼりになりやすく、気づけば条件面ばかりを優先して選ぶことが増えてしまいます。
- この方法のほうがお得だから。
- 稼ぎやすそうだから。
- 自分の得意を活かせるから。
- 将来的に需要が高くなりそうだから。
もちろん、こうした視点も大切です。けれど、どんな仕事にも、やりたくない作業、苦手な作業、これまで経験したことのない作業は必ずあります。特に副業・起業といった場合、資金力がなく始めるなら苦手なタスクは多いです。
条件で選ぶと苦しくなりやすい
条件面を中心に仕事を選んでいると、そうした業務にぶつかったときに「できれば避けたい」という気持ちが強くなりやすく、乗り越える前に諦めてしまうことも少なくありません。
一方で、「これが好き」「やっているとワクワクする」という気持ちが土台にあると、少しずつでも「こんな世界をつくっていきたい」「こういう形で仕事をしていきたい」という思いが育ちやすくなります。すると、多少大変なことがあっても簡単には折れにくくなり、結果として続ける力につながります。
そして、その積み重ねが結果にも結びついていきます。
また、不足ベースで選び続けると、無意識のうちにストレスを抱えやすくなり、心身の不調や対人関係のトラブルへと発展してしまうこともあります。本来は避けたかった未来に近づいてしまうという、本末転倒な状態になりやすいのです。
だからこそ、一度立ち止まって見直すこと、自分の心にしっかり向き合う時間を持つことがとても大切です。
最後に
「人の役に立ちたい」と思うことは、やさしさでもあります。
でも、そのやさしさの中に、自分を苦しめる前提が混ざっていないかは、一度見てみてほしいのです。
役に立つことを目指す前に、
自分は何をすると満たされるのか。
何が面白いのか。
どんな瞬間に、生きている感じがするのか。
そこを置き去りにしないこと。
自分の軸は、特別な何かを足すことでできるというより、
自分を縛っている「常識」「正しさ」「当たり前」をほどいていく中で、少しずつ見えてくるものだと思います。
もし今、仕事や働き方にモヤモヤがあるなら、
まずは「私はなぜ、それをやりたいのか?」を静かに書き出すところから始めてみてください。
その問いの中に、これからの働き方のヒントが、もうすでに入っているかもしれません。