2026年8月17日

シングルマザー 同じ300万円なのに、支援総額はここまで違う。年収だけでは見えない「所得」の話

「児童扶養手当が減るから、これ以上働かない方がいいですか?」

「非課税世帯じゃなくなると困るので、収入を増やさない方がいいですよね?」

シングルマザーの相談をしていると、こういう話が出てくることが多くなってきました。

毎月確実に入ってくる手当が減る。税金が増える。社会保険料も増えるかもしれない。子どもがこれから高校、大学と進学していくことを考えると、「今の制度を失いたくない」と思うのは自然なことだと思います。

でも、その制度を守ることが目的になって、収入を増やすチャンスまで逃してしまうというのは、それは少しもったいないなって思うんですよね。

当協会のセミナーでも、お得な働き方に関する税金のセミナーを多々開催しております。ですが、「所得をできるだけ低くしましょう」と伝えたいわけではありません。

それよりも、制度何を基準にしているのか。その“ものさし”を知ったうえで、自分の働き方を選んでほしいと思っています。

「年収300万円」働き方と残るお金の違い

例えば、

Aさんは会社員で給与300万円。

Bさんは給与120万円+事業売上180万円。

Cさんは個人事業で売上300万円。

仕事から入ってくる金額だけを見れば、3人とも年間300万円です。

さらに全員、元夫から月4万円、年間48万円の養育費を受け取っているとします。

年間に入ってくるお金は348万円。同じです。

でも実際には、税金も、社会保険も、児童扶養手当も、その後の教育支援も同じにはなりません。

なぜなら、制度は単純な「年収300万円」だけを見ているわけではないからです。

3つの働き方を比べてみる

今回のモデルは、札幌市在住、35歳のシングルマザー、子ども1人。養育費は月4万円、年間48万円という条件で比較します。

A 給与型B 兼業型C 事業型
給与収入300万円120万円0円
事業売上0円180万円300万円
養育費48万円48万円48万円
年間に入るお金348万円348万円348万円

これだけ見ると、「全部同じじゃない?」と思うかもしれません。

でも、ここから違いが出てきます。

同じ生活費でも、一部が経費になることがある

例えば3人とも、同じような家に住んで、同じくらい電気を使って、スマホやインターネットも使い、車にも乗っているとします。

年間で、

家賃120万円
光熱費24万円
通信費18万円
車関連48万円

合計210万円。

この210万円は、AさんもBさんもCさんも、実際に生活の中から払っています。

ただ、BさんとCさんは自宅で仕事をしている。スマホも仕事で使う。車も仕事に使う。

そうなると、そのうち事業で使っている部分は、合理的に区分できれば必要経費にできることがあります。

今回は分かりやすく、

Bさんは年間40万円。

Cさんは年間55万円。

生活費の中から事業部分として家事按分できたとします。

ここで大事なのは、40万円、55万円を余計に使ったわけではないということです。

もともと全員が払っている家賃や通信費。その一部を、実際に仕事にも使っていたというだけ。

さらに、広告費、Webサービス、会計ソフト、交通費、消耗品、研修費など、事業をしているからこそかかるお金もあります。

Bさんは年間36万円。

Cさんは年間60万円。

この部分は、事業をしなければ発生しなかった支出として考えます。

「所得額」はここまで変わる

2026年の給与所得控除や、青色申告特別控除65万円の要件を満たすものとして単純化すると、こんな違いになります。

A 給与300B 給与120+事業180C 事業300
仕事から入る金額300万円300万円300万円
給与所得約202万円約46万円
事業専用経費36万円60万円
家事按分40万円55万円
青色申告特別控除65万円65万円
事業所得約39万円約120万円
合計所得約202万円約85万円約120万円

同じ300万円です。

でも、制度から見える所得は、

202万円。

85万円。

120万円。

結構変わってきます。

だから、「年収300万円だからこの制度は無理」と年収だけで判断すると、実際の判定とはズレることがあるんですよね。

養育費も、児童扶養手当は所得計算に含める

養育費48万円は、実際には生活に使えるお金です。

でも、給与や事業所得と同じように所得税がかかるものではありません。

一方で、児童扶養手当では、受け取った養育費の80%を所得に加えて判定します。

年間48万円なら、

48万円×80%=38万4,000円。

この金額が、児童扶養手当の判定所得に加わります。

つまり、同じお金でも、制度によって「見る・見ない」「どう扱う」が違うということです。

児童扶養手当だけでも、年間で差が出る

今回のモデルを2026年度制度で単純計算すると、

Aさんは一部支給。

Bさんは全部支給相当。

Cさんは一部支給。

という形になります。

A 給与型B 兼業型C 事業型
児童扶養手当の判定所得・概算約222万円約105万円約150万円
支給区分一部支給全部支給相当一部支給
年間手当・概算約21万円約58万円約44万円

AさんとBさんでは年間約37万円。月平均すると3万円ちょっと違います。

月3万円って、単純に「3万円得した」という話ではありません。

週5で働いていた人が、週4にできるかもしれない。

その1日で副業を始めてもいいし、子どもとの時間にしてもいい。体調を整える時間にしてもいい。

学ぶためのお金にもできるし、事業の準備にも使えます。

残るお金が変わると、生活だけじゃなく、働き方そのものを変えられることがあるんです。

小・中学生では就学援助がある

就学援助には、所得基準だけではなく、児童扶養手当を受給していることも認定要件の一つとしてあります。

今回のモデルでは、A・B・Cとも児童扶養手当の対象になるため、就学援助も対象になり得ます。

学用品費、入学準備金、修学旅行費、学校給食費など、学校生活に必要なお金への援助があります。

筆者が済む札幌市では、固定額として計算できる学用品費や入学準備金などだけでも、小中学校期間で約32万円程度。

さらに条件に応じて、修学旅行、宿泊学習、給食費、スキー用品などの支援もあります。

こういう制度は、単に「収入が少ない人の制度」と思われがちですが、実際にはその制度独自の基準があります。

年収だけを見て、対象外だと思いこんでしまうと損をしてしまうので、制度の基準をしっかりと確認しておきましょう。

高校では、住民税非課税世帯への支援が大きくなる

高校には、高校生等奨学給付金があります。

これは授業料そのものではなく、教科書、教材、学用品、通学用品、通信費など、授業料以外の教育費を支援する返済不要の給付です。

2026年度の非課税世帯の給付額は、全日制等の場合、

国公立高校なら年間143,700円。

私立高校なら年間152,000円。

今回のモデルでは、BさんとCさんは住民税非課税世帯になる可能性が高い所得水準です。

公立高校3年間なら、

143,700円×3年=約43万円。

高校3年間でも、差が出てきます。

一方でAさんも、2026年度は高校生等奨学給付金の対象拡大があるため、「課税世帯だから0円」と単純には言えません。実際の住民税額などで判定する必要があります。

こういうところを見ても、やっぱり制度ごとにものさしが違います。

大学になると、差はさらに大きくなる

大学等の修学支援新制度には、

授業料・入学金の減免

と、

返済不要の給付奨学金

があります。

今回は分かりやすく、私立大学、自宅通学、4年間というモデルにします。

仮に、

Aさんを第3区分相当。

Bさん、Cさんを第1区分相当。

として計算すると、

Aさん

給付奨学金 約61万円
授業料・入学金減免 約102万円

大学4年間:約163万円

Bさん・Cさん

給付奨学金 約184万円
授業料・入学金減免 約306万円

大学4年間:約490万円

差は約327万円。

もちろん、実際の大学支援区分は、その時点の住民税情報、世帯状況、資産要件などによって判定されます。

今の300万円という数字だけで、18年後の支援が決まるわけではありません。

ここでは、2026年現在の制度と所得状態がそのまま続いたらどうなるか、という比較として見ています。

0歳から22歳までで見ると、見える景色が変わる

では、0歳から高校卒業、大学卒業まで、今の制度を固定して考えてみます。

児童手当は現在所得制限がないので、3パターンとも同じです。

そこに、

児童扶養手当。

就学援助。

高校生等奨学給付金。

大学の修学支援。

を重ねます。

現制度固定シミュレーションA 給与300B 兼業300C 事業300
児童手当約234万円約234万円約234万円
児童扶養手当・概算約380万円約1,038万円約790万円
就学援助・固定額部分約32万円約32万円約32万円
高校生等奨学給付金・非課税満額部分別途判定約43万円約43万円
大学給付奨学金・モデル約61万円約184万円約184万円
大学授業料等減免・モデル約102万円約306万円約306万円
主要支援総額約809万円+α約1,837万円+α約1,589万円+α

AさんとBさんでは、約1,000万円の差。

数字だけ見ると、かなり大きいですよね。

でも、ここで「じゃあ所得を低くして、ずっと制度を使った方が得」という話にしたくはありません。

むしろ逆です。

制度を守るために、未来まで小さくしない

私は、「自分は年収300万円が限界」みたいに、自分自身をそこで固定してほしくないと思っています。

もちろん、今の収入が300万円なら、300万円という現実はちゃんと見た方がいいです。

使える制度も確認する。税金も、社会保険も、児童扶養手当も、教育費の支援も。

今の条件で使えるものは、遠慮せず使ったらいい。

でも、「私はこれくらいしか稼げない」という前提まで、自分の中に作ってしまわなくていいと思うんです。

「私には資格がないから」

「学歴がないから」

「子どもがいるから」

「シングルマザーだから」

「もうこの年齢だから」

「今までずっとこのくらいの収入だったから」

そうやって考え始めると、自分にないものや足りないもの、できない理由ばかりが目に入りやすくなります。

「どうしたらできる?」より先に、「私には無理」という答えを出してしまう。

でも、実際に起業していろんな人を見ていると、そんなに単純ではないんですよね。

学歴がなくても会社を経営している人はいます。

最初から特別な才能があったから稼げるようになったわけではない人もいる。

人前で話すのが得意な人もいれば、人前に出るのは苦手だけど、仕組みを作るのが上手な人もいる。

営業が得意な人。

文章を書くのが得意な人。

誰かをつなぐのが得意な人。

コツコツ続けるのが得意な人。

人が気づかない問題を見つけるのが得意な人。

話を聞いて、整理するのが得意な人。

人によって戦い方は本当に違います。

「何ができる人なら稼げる」ではなく、自分の持っているものをどう使うか。

そこは、人それぞれなんですよね。

未来は、過去の自分だけでは決まらない

未来は、もちろん過去の積み重ねです。

今まで経験してきたこと。学んできたこと。失敗したこと。人との関係。仕事。

全部、今の自分につながっています。

でも、今まで年収300万円だったから、これからも300万円とは限りません。

今まで会社員しかしたことがないから、会社員しかできないわけでもない。

今まで人前で話したことがないから、講師にはなれないとも限らない。

人って、途中からいくらでも吸収できます。

新しいことを知る。

人に会う。

考え方が変わる。

今まで使っていなかった自分の強みに気づく。

その時は「失敗だった」と思っていたことが、何年か後に仕事で使える経験になっていることもあります。

私自身も、そういうことは何度もありました。

今はお金の作り方も一つではない

以前より今は、働き方や収入の作り方の選択肢が増えています。

会社員をしながら副業する。

週4で働きながら事業をする。

オンラインで仕事をする。

自分の経験をサービスにする。

講座を作る。

業務委託で複数の会社と関わる。

小さく事業を始める。

法人を作る。

デジタルを使って仕組み化する。

だから、「年収を増やす=もっと長時間働く」だけでもないと思っています。

収入を増やす方法は、人によって違う。

働く時間を増やすより、今の経験や知識の使い方を変えた方がいい人もいます。

お金の不安が強い時ほど、まず余白を作る

ただ、毎月ギリギリで、支払いが怖くて、子どものことも心配で、仕事も忙しい。

そんな状態で「もっと可能性を考えよう」と言われても、なかなか難しいですよね。

人は余裕がないほど、目の前のことを処理するだけで精一杯になります。

だから、使える制度は使う。

税金を知る。

社会保険を知る。

所得の仕組みを知る。

今払っているものを整理する。

そうやって少し余白ができると、情報を集めることもできるし、人と話したり、学んだり、新しい仕事を試したりもできる。

失敗しても、「もう全部終わり」にならずに済みます。

制度を活用する意味って、単純にお金をもらうことだけではないと思うんです。

制度で生まれた余白を、次の選択肢に使う

例えば、制度によって年間30万円、40万円残るお金が増えたとします。

月にすると2〜3万円。

それで週5勤務を週4にできる人もいるかもしれない。

空いた1日で副業を始める。

資格の勉強をする。

子どもとの時間にする。

身体を休ませる。

パソコンを買って仕事を始める。

広告を少し出して、自分のサービスを試してみる。

同じ30万円でも、その人によって使い方は全然違います。

だから私は、制度で残ったお金を「得したお金」だけでは見ていません。

働き方を変えられるお金。

選択肢を増やせるお金。

そういう使い方もできます。

制度から卒業する時が来てもいい

児童扶養手当をもらっているから、ずっとこの所得でいなきゃ。

非課税世帯だから、収入を増やしたらダメ。

そうやって制度に自分を合わせ続ける必要はないと思います。

今必要なら使う。

その間に生活を整えて、少し余白を作る。

その余白で学んだり、休んだり、事業を始めたり、人とつながったりする。

そして収入が増えてきたら、その時は制度から少しずつ卒業していけばいい。

300万円だった収入が、400万円、500万円、700万円と増えていくなら、それもいいですよね。私も次男出産前の離婚でしたが、当時は看護師正社員でも、夜勤ができず転職したため年収200万円程でした。そこから起業し、当時は月10万円稼ぐことも大変でしたが、気づけは2000万円まで収入upができるようになりました。

手当が減っても、それ以上に収入が増えるなら、生活そのものの選択肢が増えることもあります。

制度を守るために、100万円増える仕事を断って、20万円の手当を守る。

それが本当に自分の望む選択なのかは、一度考えてみてもいいと思います。

今が300万円でも、未来の上限を300万円にしなくていい

例え今、年収300万円だとしても、300万円の自分を否定する必要はありません。

今の自分に使える制度を使って、生活を整えればいい。

でも、300万円の自分を、未来の限界にする必要もないんです。

今使える制度は使う。

そこで少し余白を作る。

その余白で情報を集めたり、学んだり、休んだり、新しい仕事を試したりする。

そうやって選択肢を増やしていけばいいと思っています。

働き方も、お金の作り方も、生き方も、今より少しずつ変えていける。

社会保障制度は、人生の天井ではありません。

今の自分を守るためにも使えるし、次へ進むための土台にもできます。

未来は、今までの自分だけで決まるものではありません。

今から何を知って、何を選んで、何を活かすか。

そこからまた、作っていけます。

※この記事の金額は、2026年8月時点の制度・税制をもとに条件を単純化した教育用シミュレーションです。0〜22歳の累計額は、現在の制度・所得状態が将来もそのまま続くと仮定した比較であり、実際の将来受給額を示すものではありません。児童扶養手当、就学援助、高校生等奨学給付金、高等教育の修学支援新制度等は、所得・住民税額・扶養状況・資産・進路・自治体・制度改正等によって対象や金額が変わります。実際に制度を利用する際は、その時点の最新要件をご確認ください。

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