心の中にある認知や思考のケアって、忙しい毎日の中では後回しになりがちですよね。「まずは生活が安定してから」「お金に余裕ができてから」と思う気持ち、とてもよく分かります。
でも実際に、リカバリーセラピーを継続で受けている方からは「その後の人生でかかるお金が大きく変わった」「費用対効果が大きすぎる」というお声をたくさんいただいています。
今回は、養育費問題を例に、心のケアがなぜ経済的にも重要なのかを具体的にお伝えしたいと思います。
法的手続きにかかる現実的な費用

モラハラに悩んで離婚を検討している場合、相手との話し合いがうまくいかず、調停や裁判を検討せざるを得ない方が多くいらっしゃいます。
弁護士に依頼した場合の費用相場は以下の通りです
協議離婚:20~60万円(平均40万円)
離婚調停:40~70万円(平均55万円)
離婚裁判:80~100万円(平均90万円)
裁判になるほど費用は多くかかってきますが、弁護士が介入したとしても、結局取り決めをしても相手から養育費が払われないケースは多々あります。
養育費をめぐる厳しい現実
養育費の年間平均受給額は約60万円(月額約5万円)ですが、取り決め金額の全額を継続的に受け取れているケースは少なく 、支払いが途絶えるリスクがあります。
厚生労働省の令和3年度全国ひとり親世帯等調査によると、実際に養育費を受け取っている世帯の割合は
- 母子世帯:28.1%(全体のうち「現在も受けている」世帯)
- 父子世帯:8.7%(同上)
さらに、その中で養育費の取り決めをしている世帯でも
- 母子世帯:57.7%のみが実際に受給
- 父子世帯:25.9%のみが実際に受給
つまり、法的に取り決めをしても約半数は受け取れていないのが現実です。
また、法的に取り決めをしていない理由の圧倒的理由は
- 相手と関わりたくないから(34.1%)
- 相手に支払う意思がないと思ったから(15.3%)
- 相手に支払う能力がないと思った(14.7%)
上位2つは、お互いの認知の歪みで解消できる問題です。もちろん離婚するのは相手に対して、何らかのネガティブな感情を持つからという理由はわかりますが、それと生活面の課題は分けて考えていくべきだと思います。
相手が支払いをしない・途中で止める理由
相手が養育費を支払わなくなる理由には以下があります。
1位:感情的な対立・関係性の悪化
- 元配偶者への憎しみや怒りの継続
- コミュニケーションの完全断絶
- 感謝されないことへの不満
2位:面会交流との取引的思考
- 子どもに会えないことへの報復感情
- 面会交流と養育費を取引材料として使う
- 「会わせてもらえないなら父親の責任も負わない」論理
3位:認知の歪み・責任感の欠如
- 「離婚したのだから、もう関係ない」
- 「元妻に渡すお金ではない」という誤解
- 子どもの権利という認識の欠如
4位:経済的事情・支払い能力の変化
- 本人の収入減少・失業
- 再婚による新しい家族への経済負担
- 自分の生活が苦しくなった
さらに、法的な取り決めをしていても、以下のようなケースでは強制執行ができません。
- 転職を繰り返して差し押さえを逃れる
- 自営業に転身して収入を隠す(法人の資産は差し押さえができない)
- 財産を隠匿する
- 収入が極端に減る
法的な取り決め以上に、感情的な対立関係が続くこと、認知の歪みが圧倒的に大きな要因になっています。この感情的な対立は、弁護士が介入したとしても変えられる部分ではないのです。
もらう側も同じように感情で対立している
一方で、受け取る側にも感情的な壁があります
- 「当然の権利」という固定観念
法的には正しくても、この考えに固執しすぎると相手の状況や感情を無視してしまい、支払いが止まる原因になることがあります。 - 元夫への怒りと養育費を混同する
「絶対に頭を下げたくない」という感情が、養育費の振り込みがなくても連絡することができず、結果的に子どもの利益を損なってしまいます。 - 完璧主義的な思考
「決められた額を、決められた日に、一円も間違いなく」という完璧を求める思考です。相手の一時的な困窮や遅れに柔軟性を示さないことで関係が悪化してしまいます。 - 被害者意識の固定化
「私は被害者で、相手は加害者」という構図に固執してしまうと、建設的な解決策が見えなくなってしまいます。 - 面会交流を取引材料にする
「養育費を払わないなら、子どもに会わせない」という発想は、相手の支払い意欲を削いでしまいます。 - 感謝の欠如
養育費を受け取ることを「当たり前」と思い、感謝の気持ちを示さないと、支払う側に「感謝もされない」という不満が蓄積していきます。
子どもへの影響という二次的な問題

調停や裁判で関係性が悪化すると、せっかくお金を払って離婚したのに、その後の生活が苦しくなり、不安や焦りの悪循環で体調を崩すケースもよく聞きます。
ひとり親世帯の進学率が低いことだけではなく、実は不登校になる割合も高いことがわかっています。労働政策研究・研修機構の調査によると、小学校以上の子どもを持つ世帯で、不登校を経験した割合は
- ひとり親世帯:12.5%(約8人に1人)
- ふたり親世帯:5.0%
親自身が持つプレッシャーは、一番身近な子どもたちに伝わってしまい、仕事をしたいのに仕事をストップせざるを得ない状況で、さらに収入が低下し、葛藤が増えるという悪循環が生まれやすくなります。
心のケアが経済的リスクを減らす理由
相手に対する感情をいったん消化させていくことがとても大切になってきます。
これは、相手や自分を変えようとするのではなく、これまで我慢してきたこと、固く蓋をしてきた心の奥のものを吐き出していくということです。なぜ苦しい状況を自分で創り出してしまったのか、奥にしまい込んで我慢してしまったところにヒントがたくさんあります。
そこを丁寧に紐解いていくことで、実は経済的なリスクも減らしていけるのです。
養育費600万円が生み出す人生の可能性
養育費を月5万円(母子世帯の平均受取額)、10年間受け取り続けることができれば600万円になります。子どもを育てるために必要な金額を考えたら、少ないとすら感じる金額かもしれませんが、この600万円の余裕が生まれることで、こんな生活が可能になります。
子どもの教育への投資
大学受験の塾代や予備校費用(年間100万円)を4年間支払うことができます。私立大学の入学金や授業料の一部も賄えるでしょう。子どもが「お金がないから諦める」という選択をしなくて済む。これは、子どもの将来の可能性を大きく広げることにつながります。
母親自身のスキルアップ
看護師や介護福祉士、ITスキルなど、手に職をつけるための資格取得費用に充てることもできます。月々の受講料や教材費を気にせず、自分の将来への投資ができる。結果的に、より安定した収入を得られる仕事に転職することも可能になります。
住環境の改善
子どもが成長して個室が必要になった時、少し広いアパートに引っ越すことができます。または、住宅購入の頭金として活用することも。子どもが「友達を家に呼べない」と感じることなく、のびのびと成長できる環境を整えてあげられます。
心の余裕という無形資産
何より大切なのは、「今月の生活費は大丈夫だろうか」という不安から解放されることです。お金の心配が減ることで、子どもと向き合う時間や気持ちに余裕が生まれます。子どもにイライラすることが減り、笑顔で接することができる。これは、プライスレスな価値です。
緊急時の安心
子どもが急病になった時、躊躇なく病院に連れて行けます。学校行事の参加費や修学旅行費も「出せない」と言わなくて済む。突発的な出費に対応できる安心感は、母子ともに大きな支えになります。
将来への希望
「大学進学は無理かもしれない」「習い事はさせてあげられない」といった諦めから、「どんな道でも応援してあげられる」という希望に変わります。子どもも「お母さんに負担をかけたくない」という罪悪感から解放され、自分の夢に向かって素直に頑張れるようになるでしょう。
数字の向こうにある真の価値
このように、600万円という金額は単なる数字ではありません。それは母子の人生の選択肢を広げ、未来への可能性を大きく開いてくれるものなのです。
だからこそ、数万円の心のケアへの投資で、この600万円を手にできる可能性が高まると考えた時、心のケアがいかに現実的で経済的な意味を持つかがお分かりいただけるのではないでしょうか。
長期的な視点で考える投資効果
私は過去4年間で2000件を超えるリカバリーセラピーという心理療法を提供してきました。だからこそ、広い視野で見た時、自分自身のイライラや苦しさの感情が、あらゆる場面に影響を与えていることがよく分かります。
相手との関係性、養育費の問題、子どもとの関わり方、自分と子どもの健康、働き方。すべてにおいて、私たちの認知のクセは良くも悪くも影響を与えています。
現在の価格だと、9回継続セッションを受けるのに、現在は3万円弱です。広く捉えた時、これが最もコスパ・タイパの良い投資にもなります。
根本解決への道筋:感情の対立を解消する3つのステップ
ここまで読んでいただいて、「確かに感情的な対立が問題だということは分かったけれど、具体的にどうすればいいの?」と思われた方も多いのではないでしょうか。
実は、感情面の対立を解消するために最も効果的なのは、相手を変えようとするのではなく、自分自身の認知パターンを整理することです。
Step1:自分の感情を客観視する
まず大切なのは、自分がどんな感情を抱いているのか、その感情の奥にある「思い込み」を見つけることです。
例えば、「養育費を払わない元夫が許せない」という感情の奥には
- 「私一人で子育てするのは不公平」
- 「約束を守らない人間は信用できない」
- 「子どもがかわいそう」
といった思考パターンが隠れていることがあります。
この思考パターンを認知行動療法では「認知の歪み」と呼びますが、決してあなたが悪いわけではありません。これまでの人生経験の中で、自分を守るために身につけた防御メカニズムなのです。
Step2:相手の立場を理解する(共感ではなく理解)
相手の行動を許す必要はありませんが、相手がなぜそのような行動を取るのか、その背景を理解することで、対処方法が見えてきます。
養育費を払わない元夫の心理には
- 「離婚したのだから、もう関係ない」という認知の歪み
- 「会わせてもらえないなら、なぜ払わないといけないのか」という取引的思考
- 「頑張って働いたお金を、感謝もされずに渡すのは辛い」という承認欲求
これらの感情が混在していることが多いのです。
相手を理解することで、「どうアプローチすれば相手の行動が変わるか」という戦略的な視点が生まれます。
Step3:建設的なコミュニケーションを設計する
感情的な対立を解消するための具体的な方法として、以下のようなアプローチが効果的です。
感謝の気持ちを伝える
「◯◯さんのおかげで、△△ができました。ありがとうございます」 養育費を受け取ったら、子どもがどのように成長しているか、どんな体験ができたかを具体的に伝える。
子どもの近況を写真付きで共有する
「今月は運動会がありました。△△の部分で頑張っていました」 父親としての存在意義を感じてもらい、支払い継続の動機づけにつなげる。
面会交流と養育費を分けて考える
「面会交流のことは別途相談させてください。養育費については、子どもの権利として継続をお願いします」 取引的な思考に巻き込まれないよう、論点を整理する。
支払いが困難な時の相談窓口を作る
「何か困ったことがあれば、まず相談してください」 支払いが止まってから追及するのではなく、事前に相談しやすい環境を整える。
頭で理解するだけでは悪化します
心の底から感じられることがポイントです。
「相手を理解しよう」「感謝を伝えよう」と頭で分かっても、実際にやってみると余計に辛くなってしまった経験はありませんか?
心の奥では「この人を許したくない」「なんで私ばかりが我慢しなければいけないの」という感情が渦巻いているのに、思考で押さえつけようとすると、相手は表面的に取り繕っていることを敏感に察知します。
そして「本心じゃないな」と感じて、かえって支払い意欲が削がれてしまうことがあるのです。
心の底から感じられる「ニュートラル」な状態とは
本当に効果的な解決策は、感情と思考が一致した状態、つまり「ニュートラル」な状態を作ることです。
ニュートラルとは、相手を好きになることでも、許すことでもありません。
「この人は、こういう人なんだな」 「この人なりの事情があるんだな」 「でも、子どものためには協力していこう」このように、感情的な波立ちがなく、事実を事実として受け入れられる状態のことです。
感情を消化するプロセスの重要性
ニュートラルな状態になるためには、まず心の奥にある感情をしっかりと感じきることが必要です。
- 「悔しい」「許せない」「不公平だ」という感情を、まず十分に感じる
- その感情の奥にある「大切にされたかった」「認められたかった」という本当の気持ちに気づく
- 自分自身の感情を受け入れ、労わってあげる
このプロセスを経て初めて、相手に対する感情が自然と落ち着いてくるのです。
心の底からニュートラルな状態になると、感謝を伝える時も「伝えなければならない」という義務感からではなく、「子どもが喜んでいるから、この気持ちを共有したい」という自然な気持ちから言葉が出てきます。この時の「ありがとうございます」は、心からの言葉として相手に届き、協力的になってくれる可能性が高まります。
この状態を作るプロセスは、一人で行うのは困難です。認知行動療法やリカバリーセラピーでは、専門家が伴走しながら、安全な環境で感情を感じきり、自然とニュートラルな状態に導いてくれます。
物事を見る視点が人生の分かれ道になる

自分自身のケアという視点だけで見れば、自分にお金をかけるのはもったいないと思う人も多いかもしれません。
でも、物事をどの視点で切り取って見ていくか—それが、人生の分かれ道にもなります。
一人では中々克服できないという方こそ、コスパよく・タイパよくいきたいと思う人ほど、ガチガチになっている思考を一緒にゆるめていく伴走者がいると良いでしょう。
結果的に見ると数万円の投資で、数百万円のお金の行き先が変わります。
大丈夫。あなたは本当に十分頑張っているし、もっと楽に生きる権利があります。信じて向き合いきるということが一番大事なのです。
認知行動療法を探してみたり、私たちのリカバリーセラピーもご活用ください。
出典・参考資料