最近では子どもへの金融教育も必要だと言われるようになりましたが、日頃からお子さんとどのようにお金の話をしていますか?
よく、「子どもに負担をかけたくない。」「家計の問題を子どもに心配させたくない。」という価値観などにより、家計の状況を見せないことが一般的かもしれません。家計=我が家の経営です。ここにはご家庭ごとに様々な工夫が詰まっているので、お金をかけずに金融教育をする大きなチャンスでもあるでしょう。
三井住友信託銀行三井住友トラスト・資産の未来研究所「金融リテラシー度とファイナンシャル ウェルビーイングに関する実態調査」2023によると、金融リテラシー度が高い人は、金融教育や実践経験がある方はリテラシーが高めであり、金融リテラシーが高い人ほど年収や資産形成額(年収に関わらず)が多い傾向にあるとも。さらにはリテラシー度が高いほど、「お金以外のために働く」といった充実感のある生活を送る傾向があることも分かっています。
この記事では、高梨子家の取り組みも紹介しながら、子どもの金融教育について考えてみたいと思います。
目次
- 金融リテラシーとは
- 家計について伝えることのメリットデメリット
メリット
デメリット - お金の話どこまで伝える?
お金に関する話の範囲
高梨子家の場合
お金の話をタブーにしておくデメリット
養育費を通して父親の事を話す - 目的は理解する事ではなく経験すること
- お金を数字・手段として捉えているからこそ日頃から話せる
お金に関する捉え方のクセ - お金や家計に対する不安や劣等感などが強い時は
金融リテラシーとは
個人が適切な金融知識とスキルを持ち、日常生活や将来の計画の中でお金に関する正しい意思決定をする能力を指します。具体的には、収入・支出、貯蓄、投資、借金、保険、税金などに関する知識を持ち、それを活用して個人や家庭の経済的な安定や目標を達成する力を意味します。
幅広い分野で学びを得ていくことで、お金が目的になるような考え方から、夢や目的を達成させる手段としてお金を考えられるようになっていきます。そうなると、お金に振り回されることも減り、「自分の幸せ」と向き合うこともできるようになってきます。
家計について伝えることのメリットデメリット
家計を見せることによって「家庭のお金の流れ」を知ることは、子どもにとって良い学びの機会となります。ですが、メリットだけではなく、デメリットを感じることもあるため、両方の側面から見ていきたいと思います。
メリット
- お金の価値観が育つ
子どもが日常生活の中で「お金」の役割や重要性を理解するきっかけになり、健全な金銭感覚が育つ。 - 経済的自立の準備
収入や支出の仕組みを学ぶことで、将来的な経済的自立への意識が芽生える。 - 責任感と協力意識が育まれる
家族を支える一員として、親の働きや収入の背景を知ることで、家族への感謝や協力意識が高まる。 - 興味・関心の幅が広がる
お金の流れや事業の仕組みを知ることで、新たな興味を持つきっかけになる。経済や起業、投資への興味を引き出す可能性もある。 - 問題解決能力の向上
現実的な課題やリスクに直面する経験を通じて、自分で考え、判断する力が育つ。 - 家庭の一体感が生まれる
家族全体で家計について共有することで、家族の絆や信頼感が深まる。
デメリット
- 精神的負担になる可能性
収入や支出、借金などネガティブな要素が強調されると、子どもに不安感やプレッシャーを与える可能性がある。 - 子どもの価値観が偏るリスク
「お金が全て」といった偏った価値観が生まれる恐れがある。 - 親子の役割が逆転する可能性
親が子どもに過度に依存すると、子どもが親を支える役割を負い、心理的な負担がかかることがある。 - 子どもの年齢や理解度による限界
小学生では抽象的な話を理解するのが難しく、誤解や混乱が生じることがある。 - プライバシーの問題
家計や事業の詳細を話すことで、子どもが外部に情報を漏らしてしまうリスクがある。 - 将来の不安を過剰に抱く可能性
家計や経営の問題を過度に共有すると、「家が貧しい」「将来が不安」といった過剰な心配をする子もいる。
お金の話どこまで伝える?
子どもの年齢によっても理解度や、受け止め方は変わってくるので、一概にいつまでに何を伝えたほうがいいといったものはありませんが、本物のお金でやり取りする機会を増やしたり、耳にする機会を少しずつ増やしていけるといいのではないでしょうか。金融教育の内容をまとめてみたので、参考にしてみて下さい。
お金に関する話の範囲
- お金の話を全くしない
- 家計や収入の話題は完全に避ける。
- 子どもにはお小遣いのみ渡し、管理の指導もほとんどしない。
- 基本的な節約や貯金の話のみ伝える
- 「無駄遣いはしないように」「貯金は大事」といった基本的な金銭教育を行う。
- お小遣い帳をつけさせるなど、簡単な管理方法を教える。
- お小遣いや生活費の具体的な金額を話す
- 子どものお小遣い制度や家庭の生活費の概略を教える。
- 「この金額で1か月やりくりしている」など具体例を示す。
- 収入と支出の全体像を共有する
- 親の収入や支出、貯金目標をある程度開示。
- 家族で家計簿や予算計画を共有する。
- 経済的な状況や将来計画まで詳細に話す
- 収入源や支出の内訳、家計の現状や将来の目標を具体的に説明する。
- 子どもに実際の家計簿や投資計画を見せる。
- お金の仕組みや経済全般を教育する
- 家計だけでなく、税金や投資、ローンなど経済全般について教える。
- 仮想通貨や株式投資など、実践的な経済知識を共有する。
- 子どもを家計管理に参加させる
- 家族の予算を子どもと一緒に組む。
- 一部の支出管理を子どもに任せる。
- ビジネスや副業についても話す
- 親の個人事業や副業の収入や運営状況を開示。
- 子どもと一緒にビジネスのアイデアを考える。
高梨子家の場合
・家計の収支について
・稼ぎ方、ビジネスモデルについて
・イベント出店
・お年玉で仮想通貨投資の経験
・税金や社会保障について
身近な話題から、少しずつ子どもに話をしたり、質問を投げかけることを心がけています。例えば、我が家では、生活費がどれくらいかかっているのか、個人事業や法人収入、さらには養育費や各種手当も含めた収支の全体像を共有しています。余裕がある月もあれば、ピンチの月もある。こうした事実を感情を交えず伝えることで、子どもが「僕はこれを頑張るから、ママはこれを頑張って」と言いながら自分で考え、お手伝いを増やして、私の仕事の応援をしてくれる時も増えました。
また、お金の使い方も変わりました。あったらあっただけ使うという衝動性は、まだ残っていますが、その中でも使い道を考えて、「ここまで」を自分で決めることができるようになりました。そしてちょっと先の未来のために、「この分は投資する。」と言いながら、仮想通貨を購入したりして、彼の中の選択肢が確実に増えているように感じます。
お金の話を日常的に耳にする機会が増えれば、お金のことを考えることも、子どもたちにとって「当たり前」になります。お金について話すことが当たり前になれば、相談しやすい環境を作れるというメリットもあります。これにより、トラブルを未然に防ぐことも期待できます。
お金の話をタブーにしておくデメリット
実際にお金の問題を相談に来られる方の多くは、深刻な状況に陥ってからというケースが非常に多いです。「もうお金が無くなってどうしようもない」という状態になってしまうと、できることも限られ、打つ手がないことも少なくありません。相談が遅れてしまう背景には、「こんなことで相談するのは恥ずかしい」「自分の状況を見られたくない」という想いがあるのだと思います。
しかし、そのままにしておくことで問題がさらに悪化してしまうことも事実です。それならば、軽いうちに相談したり、早めに行動を起こせるようにすることが大切ではないでしょうか。日常の中でお金について自然と話せる環境を作ることは、子どもにとっても、家族にとっても、大きな安心感につながるはずです。
養育費を通して父親の事を話す
今回、長男には養育費について、金額も含めてこれまでより具体的に話をしました。次男が生まれるころから7年間、毎月払い続けていること。何のために払っているのか、他に子どもたちを育てるために、国からもお金をもらっているんだよ。といった形で、ママだけが子どもを育てるためにお金を出しているわけではなく、いろんな人のサポートがあって、生きることができていることを伝えました。
そんな話を聞いて、「お父さんがずっと払ってくれているのはすごいね」と感心していました。そして、「普通から見たら少ないかもしれないけど、大きいお金じゃない?毎月大変でしょ。」と、自分なりにその価値を捉えている様子でした。
自分たちのためにお金を払ってくれているという事実が、彼にとって希望のように映ったのかもしれません。そんな反応を見て、自然と感謝の気持ちが芽生えている姿に、素敵だな、成長したなと感じ、嬉しい気持ちになりました。
子どもの純粋な視点は、大人が忘れがちな「感謝する心」を思い出させてくれる瞬間があります。こうして少しずつ、お金の話を通じて感謝や理解を深めていくのは、大切な学びの一つだと改めて実感しました。
目的は理解する事ではなく経験すること
もちろん、まだ小学4年生の長男が、大人のように深く考えたり感じたりすることは難しいかもしれません。ですが、子どもが興味や関心を持ったタイミングで、今の彼がどう感じたのかを大切にしたいと思っています。
たとえば、投資についても子どもたちにオープンに話し、彼ら自身の仮想通貨ウォレットを作り、お年玉で投資を始めています。プラスになる可能性、マイナスになる可能性も伝えたうえで、本人たちが自分で決めました。すべてを理解できていなくても構いません。大切なのは、「自分ごと」として体験することで得られるリアルな学びです。自分に関連するお金だと、興味関心は高まるので、学びの吸収量も増えていきます。
投資にはもちろんリスクが伴います。しかし、それ以上に「プロジェクトを応援する気持ち」や「未来を見据えたワクワク感」を体験してほしいと考えています。未来の可能性を想像し、大人たちが本気で何かを目指している姿を見ること、そしてその過程に触れることで、ビジネスモデルの学びにもなります。そして子どもたちにとってポジティブで楽しい記憶になるのではないでしょうか。
だからこそ、子どもたちに対しては、事業説明会や体験会にも一緒に参加したり、創設者の話を聞くタイミングがあれば一緒に聞くようにしています。
どんな未来を創ろうとしているのか。作り上げていく過程や、それが世の中に広がっていく様子を共に見てもらうことは、ただ数字や結果を学ぶ以上に意義のあることではないでしょうか。未来に向かって何かを応援し、そこに関わる喜びを体験すること。それは、子どもたちにとってかけがえのない学びとなり、将来の豊かな価値観を育む一歩になると信じています。
お金を手段として捉えているからこそ話せる
私がこうしてお金のことを子どもたちに開示できるのは、自分自身がそこにネガティブもポジティブも感じていないからだと思います。お金に対して偏った感情を持たないことで、自然に話せる環境が作れるのだと感じています。
ただ、こうしたお金の話に対して「恥ずかしい」「見せたくない」と感じる方がいるのも事実です。
- 貯金がないことが恥ずかしい。
- 収入が少ないことが恥ずかしい。
- 家計がうまく回らないことを知られたくない。
- 子どもに「お金がない」と思わせたくない。
- 子どもには何不自由なく過ごさせてあげたい。
こういった感情から、お金の話を避けてしまうケースも多いでしょう。
もちろん、「お金の話をしないこと」にはメリットもデメリットもあります。ただ、そのメリットやデメリットをどう捉えるかは、親自身の価値観に大きく影響されているのではないでしょうか。
物事の価値は多面的で、人それぞれの捉え方次第で大きく変わります。認知の歪みがある場合、どこまでもネガティブに捉えてしまいがちです。
お金に関する捉え方のクセ
例えば、経済的に豊かではない家庭という事実があったとして、「家が貧乏だから」と奮起して頑張る人もいれば、「親ガチャ失敗」と親を責めて諦めてしまう人もいます。結局のところ、何が起きたかではなく、それをどう意味づけしていくかが、人生を左右します。お金の大小ではなく、そういった捉え方・向き合い方を家計を通して学ぶことに大きな意味があると思います。
そして、子どもがネガティブに捉えすぎてしまう場合、多くは親自身もその状況に対して自分を責めていたり、周りを批判していたりとネガティブなことが多いです。なので結局は子どもがどうこうというよりも、親自身がどう捉えているのか。が重要となってきます。
小さな一歩でも「今、自分にできること」を考え、少しずつ先を見据えることで、身の回りにあるものへの気づきが生まれてきます。その気づきが、心を豊かにし、人との関係性をより良いものへと変えていくのではないでしょうか。
お金の話は単なる数字の話ではなく、自分の人生や未来をどう意味づけし、どう行動していくかを考える一つのきっかけなのです。子どもとどんな会話をしていくのか、も大事かもしれませんが、それ以上に親自身がお金とどう向き合っているのか?今一度考えてみてくださいね。
お金や家計に対する不安や劣等感などが強い時は
お金や家計に関する不安や劣等感は、多くの人が一度は感じたことがあるものです。「貯金が少ない自分はダメだ」「収入が低いのは努力不足のせい」といった思い込みが心に根付いてしまうと、お金にまつわる話題を避けたくなったり、家族と共有することが難しくなったりします。
こうしたネガティブな感情が強いときに効果的なのが、認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)です。認知行動療法は、自分の考え方や行動パターンを見直し、より現実的で前向きな思考を育む心理療法です。お金への不安や劣等感にも、このアプローチはとても効果的です。
実際に、メンタル不調で相談しに来られた方の考え方が変わったことで、旦那さんにも変化が生まれ、世帯の収入が上がったというケースや、仕事の成約数が0件だった方が、成約率8割以上で、収入確保ができるようになったといったことも。私自身も、自分の認知の歪みをケアすることができるようになって、1ヵ月の収入が300万円を超えるといったこともできるようになりました。
心と体、そして経済状況は繋がっています。お子さんだけではなく、共に学び、親子で金融リテラシーを上げていけるようにできるといいのではないでしょうか。当協会でも認知行動療法を活用したカウンセリング(リカバリーセラピー)を提供しているので、ご活用ください。