病院での仕事に疲れ、他の働き方を模索している、あるいは在宅ワークを考えつつも、自身の看護師としてのスキルを無駄にしたくない、さらにスキルアップを目指したいなど、看護師も働き方の選択肢が広がっているからこそ、キャリア形成に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
中でも、今回は産業保健分野での働き方について、紹介していきたいと思います。
実際に当協会代表理事である高梨子は、最近経営者と話をしていて、潜在的需要の高さをひしひしと感じています。健康経営もしっかりと導入している企業はまだまだ少なく、形式的に導入しているケースも多々あります。メンタル不調による休職が毎年出てしまう、健康経営を導入しても改善できない問題があるなど、根本的なケアが必要とされています。私自身、特に認知行動療法の必要性がとても高く、看護師の仕事と相性がいいと思っているので、そのあたりのお話をしていきたいと思います。
<目次>
1.企業にとってなぜ産業保健師・看護師が必要なのか?
2.時代の流れとニーズが産業看護師をバックアップ
3.企業への価値提供が可能
4.産業看護師×認知行動療法(CBT)で根本問題の解決力アップ
5.企業対応に活かせる他の職種にはない看護師の強み
6.産業看護師という働き方について
7.さいごに
1.企業にとってなぜ産業保健師・看護師が必要なのか?
企業は、社員の高齢化や人材不足などもあり、業績向上のためだけでなく、従業員の健康や幸福を保つことで生産性を高める「健康経営」を意識する必要があります。その中で、産業保健師や看護師の役割がますます重要視されています。
しかし、形式上の導入だけになっているケースや、既存のEAP(従業員支援プログラム)や産業カウンセラー、産業保健師・看護師の配置だけでは対応しきれない課題も多く残されています。
看護師の活躍できる場所が変化
看護師と言えば医療機関で働くものといった一般的なイメージが、まだまだあるのではないでしょうか。基本的にはどの規模の病院で働くか、何科で働くか、正社員かパートか。そんな選択になっている方が多いです。ですが時代の流れとともに、医療機関から在宅(地域)へ、そして産業分野へと確実に活躍の場所が広がってきています。
というのも、治療やケアは病気になってから行うものですが、医療費が年々上昇し続けていることで財政上の負担が大きくなっています。そのため治療から予防へ、国の政策もシフトしています。悪化する前に一般の方と接する機会が多い企業内でどれだけ予防できるか、早期発見ができるかますます重要となってきます。
2.時代の流れとニーズが産業看護師をバックアップ
近年、メンタルヘルスケアの重要性が高まる中、特に中小企業へのストレスチェック義務化が進められています。2024年10月10日、厚生労働省は「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」において、従業員50人未満の事業場にもストレスチェック制度の義務を拡大する方針を示しました。ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第7回資料 |厚生労働省
これまで、従業員50人以上の事業場に対してのみ義務付けられていたストレスチェック制度が、小規模事業場にも適用される見込みです。この動きにより、企業・労働法務の観点から、士業やEAP(従業員支援プログラム)コンサルタントなどが健康経営に関与し、特にハード面での介入範囲を広げています。
しかし、これらの取り組みだけでは根本的な解決に至らない問題も多く、ソフト面を支える産業看護師の役割が注目されています。産業看護師は、従業員の健康相談や健康診断、保健指導、病気や怪我の処置などを行い、特にメンタルヘルスケアにおいて重要な役割を担っています。
特に、小規模事業場では産業医の選任義務がなく、ストレスチェックの実施体制が整っていないため、外部機関の活用が推奨されています。このような背景から、看護師の経験を活かし、社会に貢献できる場が増加していくと考えられます。
医療現場から地域、そして産業へと、国の政策も変化しており、看護師の活躍の場はますます広がっています。
3.企業への価値提供が可能
1. 生産性向上
認知行動療法や読心術を活用することで、従業員の思考や行動が前向きになり、業務効率が向上します。これにより、チーム全体のパフォーマンスが高まり、次のような効果が得られます。
- 生産性の向上:業務効率化によって、従業員のアウトプットが増加。
- パフォーマンス向上:従業員一人ひとりが最大限の能力を発揮できる環境を実現。
- 目標達成能力の向上:認知行動療法により、個々の目標設定や実現が効率化。
2. コスト削減
効率的な働き方を促進することで、無駄なコストを削減できます。具体的には以下のようなメリットがあります。
- 残業時間の削減:業務効率化により、必要な残業が減少。
- 人件費削減:残業代が抑えられ、経費削減につながる。
- 健康保険コスト削減:メンタルヘルス向上により、医療費負担が軽減。
3. 職場環境改善
従業員が安心して働ける環境を整えることで、チーム全体の協力体制が強化されます。また、ハラスメントや職場の摩擦が減少し、心理的安全性が高まります。
- 職場風土の改善:読心術で人間関係を調整し、信頼関係を強化。
- ハラスメントの減少:加害者・被害者双方の心理ケアで、根本的な解決が可能。
- 心理的安全性の向上:安心して意見を言える環境が整い、ストレスが軽減。
- コミュニケーションの円滑化:読心術を活用したアプローチで、誤解や対立を防止。
4. メンタルヘルスケア
従業員の心の健康を守ることで、欠勤や休職、メンタルヘルス障害のリスクを低減します。これにより、組織全体の稼働率が向上します。
- 欠勤率低下:従業員の健康状態が改善し、職場への出席率が向上。
- 休職者の早期復帰:心理支援で早期復職を促進。
- メンタルヘルス障害の予防:早期介入で、うつ病やストレス障害の発症を防ぐ。
- ストレス管理能力の向上:個々が自己管理能力を高め、ストレスに対処。
5. 人材定着・採用
職場環境が改善されることで、従業員の離職率が低下し、採用や育成コストが削減されます。多様性を受け入れる文化も形成され、新たな人材確保がしやすくなるのも魅力です。
- 離職率の低下:職場環境が良くなり、定着率が向上。
- 新規採用コストの削減:離職者が減り、新たな採用活動が減少。
- 多様な働き方への対応:個々のライフスタイルやニーズに応じた支援が可能。
- 人材確保の容易化:働きやすい環境が外部からも評価され、新しい人材が集まりやすい。
6. 組織力強化
チーム全体のエンゲージメントや協力体制を強化し、イノベーションが生まれる土壌を整えます。
- エンゲージメント向上:従業員の貢献意欲が高まり、チームの結束力が強化。
- チームワークの強化:信頼関係が深まり、業務効率が向上。
- イノベーションの促進:心理的安全性の向上で、新たなアイデアが生まれやすくなる。
- リーダーシップの向上:自己効力感を高め、リーダーとしての能力が発揮される。
7. 法的・ブランドリスク軽減
職場での問題解決やリスク予防が徹底されることで、企業の社会的評価やブランド価値が向上します。
- 法的リスクの低減:ハラスメントや過労問題の発生率が低下。
- 企業ブランドの向上:健康経営の実践により、社会的評価が高まる。
- 危機対応能力の向上:緊急時にも冷静に対応できる従業員を育成。
4.産業看護師×認知行動療法(CBT)で根本問題の解決力アップ
当協会では認知行動療法をベースとしたカウンセリング技術を普及させていますが、色々占いやカウンセリングを受けてきたという方もよくいらっしゃいます。今まで解決できなかった問題が解決できる感覚に感動していただくことが多いのですが、メンタル不調の時だけではなく日頃から活用できる技術でもあります。カウンセリング等と異なり、自己探求を一緒に行うことで思考パターンや認知の歪みを修正することが可能です。そのため、問題そのものを繰り返しにくくしていきます。
5.企業対応に活かせる他の職種にはない看護師の強み
EAPや従来の産業保健の対応は形式的なサポートが中心で、従業員の本質的な問題にはアプローチできません。メンタルヘルス問題は、職場環境だけでなく、トラウマや性格特性、遺伝的要因が絡むため、深層的な対応が必要です。また、個々の解決に留まらず、組織全体の風土改善やコミュニケーション向上には、組織心理学や行動科学を取り入れた根本的なアプローチが求められます。
1. 人生全ステージに対応する幅広い経験
看護師・保健師は、妊娠・出産から終末期ケアまで、人生のあらゆるステージで個別対応を行う経験を積んできました。身体的ケアだけでなく、心理的・社会的な要因にも目を向けるスキルを持ち、病気の診断や治療、リハビリまでの知識を活かして、一人ひとりの健康課題に的確に対応できます。
2. 社会的支援や家族を巻き込む統合的アプローチ
介護問題や退院支援を通じて、医療制度や介護保険、福祉サービスと連携する実績があり、従業員が抱える家庭やライフイベントに対する具体的なサポートが可能です。また、家族を含めた統合的な支援ができるため、個人の健康だけでなく、家庭環境も含めた総合的な解決を目指せます。
3. プライベート要因への深い理解と実践的なケア
従業員の仕事のパフォーマンス低下の背景にあるプライベートな問題やストレスに目を向けることが得意で、問題の本質を捉える力があります。心理的サポートから身体の健康維持、家庭の問題解決、社会的支援制度の活用までを一貫して支援することで、企業の健康経営においてトータルなケアを提供します。
6.産業看護師という働き方について
メリット
- 働き方の柔軟性
病院勤務に比べて固定された勤務形態に縛られることがなく、家庭やプライベートの時間を確保しやすい働き方が可能です。心身の疲労感は変わってくるでしょう。特にシングルマザーの方にとっては、子どもとの時間を大切にしながら収入を得られるのが大きな魅力です。 - スキルを活かして新たな分野へ
企業のメンタルヘルスケアやハラスメント対応、ストレスチェックなど、看護師の経験を活かせる場が増えています。 - 高収入も実現可能
歩合制や事業所得としての働き方を取り入れることで、自分のスキルと成果に応じた収入を得ることができます。どんな利益を提供できるのか言語化ができ、実績を出せることで収入は増やしていけます。
デメリット
- 知識・スキルの習得が必要
企業での活動には、看護師としての医療スキルに加え、会社法務やハラスメント対応スキル、コミュニケーションスキルなどの学びが求められます。 - 初期投資と時間
起業や新しい働き方を始める際には、準備に一定のコストや時間がかかります。しかし、それを乗り越えることで新たな可能性が広がります。
事業所得を持つ意味
働く看護師が事業所得を得ることには、収入の安定化や節税のメリットがあります。例えば、シングルマザーであれば、合計所得額によって社会保障制度の受給判断がされてしまうため、合計所得額を抑えることができれば手元に残るお金は増やせます。特に給与所得と事業所得に分散することで、両方の「控除」が活用できるため、所得額を抑えやすくなるのです。
さいごに
今までの経験だけで、将来を考えていくのか、時代の流れを読んでスキルアップしていくのかでは働きやすさも自身の健康状態も変わっていきます。
時代の流れは速いからこそ、柔軟にキャッチしていきましょう。小さなことからでもチャレンジしていった先には、今まででは考えられなかった人生を作ることができます。
当協会では仕事を通して自己成長、WellBeingを実現させたい方のサポートをさせていただきます。問題解決型カウンセリング技術の体験講座や養成講座について詳しく聞きたい方はお問い合わせください。