看護師は資格職だから、離婚してもやっていける。
そんなイメージを持たれやすい仕事です。
実際、私が現場で働いていた頃も、シングルマザーの看護師は珍しくありませんでした。
だからこそ、「看護師なら大丈夫」と思いやすいかもしれません。
でも、実際に生活してみると思っている以上にきつい。
夜勤ができるか、子どもを誰が見るのか、住む地域に働き口があるか、制度がいつどう反映されるか。
この現実を見ないまま離婚後の生活を考えると、思った以上に苦しくなるのです。
この記事では、元看護師としての実体験と、FPとして見てきた現実の両方から、看護師が離婚後に苦しくなりやすいポイントを整理します。
目次
Toggle看護師は「離婚後も何とかなる」と思われやすい
看護師は、資格がある。
働く場所に困りにくい。
収入もある。
こうしたイメージから、離婚後も比較的やっていけそうな職業だと思われやすいです。
実際、現場にはシングルマザーの看護師もいますし、離婚後に看護師資格を取って働き始める人もいます。
そうした姿を見ていると、「自分も何とかなるかもしれない」と感じやすいのは不自然ではありません。
ただ、ここで一度考えてもらいたいです。
働けることと、生活が無理なく回ることは同じではありません。
看護職の仕事は、夜勤・交代制勤務の負担が大きく、日本看護協会もその負担軽減のためのガイドラインを示しています。
つまり看護師は、生活再建の武器にもなる一方で、家庭運営との両立コストが高い仕事でもあります。 日本看護協会

私自身、夜勤をすることが現実的ではありませんでした。
私の場合、離婚前から、夜勤中に子どもを家で見てもらえる状況ではありませんでした。
当時の夫は、夜も遅く、朝帰ってくるような働き方でした。
朝に出て、朝に帰ってくる。
ほとんど仕事だけの生活で、夜間の育児を頼れる状態ではなかったんです。
そのため、私は院内保育を使って夜勤をしていました。
ただ、院内保育は夜勤中に預かってくれるのであって、夜勤明けの自分を休ませてくれるわけではありません。
ここが、実際にやってみるとかなりしんどかったです。
夜勤が終わっても、そのまま子どもの世話が始まります。
眠い、しんどい、特に仮眠が一切できない夜勤明けは、体力が有り余っている子どもの面倒は大変でした。
判断力も落ちているし、体も重い。でも小さい子どもには、私の状況なんてわかるわけもなく、待ってくれません。
私は二人目の子どもを妊娠中に離婚したのですが、1人でも大変だったのに、夜勤明け2人の面倒を見るなんてどう考えても無理だろうと思い、実家に帰ることにしました。しかも夜勤の時に子どもの体調不良があれば、変わってくれる人もいないわけなので、代わりのスタッフ確保する職場にも大きな迷惑が掛かってしまいます。
そういった理由もあり夜勤はできないし、下がった給料で当時の家賃を支払っていくことは厳しいと思ったんですよね。
夜勤ができないだけで、家計は大きく変わる
看護師の収入は、基本給だけでできているわけではありません。
夜勤手当が家計をかなり支えている人は多いです。
日本看護協会も、看護職の基本給与額・税込給与総額・夜勤手当額のデータを公表しています。
つまり、公的に近い整理でも、看護師の給与は夜勤の有無で見え方が大きく変わる前提で扱われています。 日本看護協会

私自身、2交代勤務で夜勤を月10回前後していたため、手当だけで月に10万円以上変わりました。
逆に言えば、夜勤を外したら、その分がそのまま消えるということです。
特に民間企業であれば、勤続年数が長くても基本給があまり上がらない場合があり、正社員でも日勤のみになると手取り20万円未満ということは良くあります。
夜勤をすれば収入は増えるけど、そのぶん生活全体が崩れやすくなります。
実際に働いてみないとわからないと思いますが、こういった事情は事前に考えておく必要があります。
- 夜勤ができるか
- 夜勤明けに休めるか
- 子どもの急病対応ができるか
- 自分の体力が持つか
この条件が揃わないと、夜勤込みの収入は維持できません。
FPとして見ても、離婚後の家計で大事なのは、理論上の年収ではなく、今の生活条件で再現できる収入です。
ここを見誤ると、「収入はあるはずなのに苦しい」という状態に入りやすくなります。
看護師ならどこでも働けるとは限らない
もう一つ見落とされやすいのが、地域差です。
看護師は働く場所が多い、と言われます。
これは半分は本当です。
でも、半分はかなり雑です。
厚生労働省の資料でも、看護職の就業先は病院・診療所だけでなく、訪問看護や介護施設などに広がっています。
その一方で、需要と供給には地域差があり、一部の地域では需給見通しも一様ではありません。
つまり、資格があることと、自分の地域・子どもの年齢・働ける時間に合う職場があることは別の話です。 厚生労働省


私が地元に帰ったときも、夜勤がある病院はなく、唯一あった総合病院もなくなって、選択肢はクリニック中心。
豪雪地帯でもあるため、冬の移動もリスクが高く、「看護師だからどこでも稼げる」は成立しませんでした。
これは地方だけの問題ではありません。
都市部でも、保育園の送迎、通勤距離、学童、病児保育の使いやすさによって、現実に選べる職場はかなり絞られます。
だからこそ離婚後の働き方は、看護師として何ができるかではなく、自分の生活条件で何が回るかで考えたほうが、現実的です。
支援制度は色々あるが、すぐ対象になるとは限らない
離婚後のお金でよくあるズレが、制度への期待です。
ひとり親家庭向けの支援制度はあります。
たとえば児童扶養手当は、所得条件によって支給の有無や金額が変わります。
こども家庭庁でも、制度の案内や所得限度額の改正が示されています。 こども家庭庁
ただ、ここで大事なのは、制度があることと、今すぐ家計が楽になることは別だという点です。
例えば以下の画像のように、ひとり親の支援制度、児童扶養手当では所得の判定基準が2年前であることで手当てが対象外となってしまうことも多いです。私もそうでした。出産して働けない期間であったとしても、所得制限がクリアできず、約2年間は支給対象外となっていました。

FPとしてご相談を受けていても、ここの問題がよく当てはまります。
感情としては、もう限界、早く別れたい。
でも、収支計画の面では、
「思ったより手当が入らない」
「想定と違って当面は自分の収入で回す必要がある」
「今の働き方と制度の反映時期がずれている」
ということが起きやすいです。
なので私は、離婚前に一度、感情と収支計画を切り分けて見ることをおすすめしています。
しんどいからこそ、数字と制度は紙に出して、見える形にしておく。
これだけで不安の根源が明確になり、何をすればいいのか具体的に考えられるようになります。
看護師夫婦・共働き夫婦ほど、家と家計で揉めやすいことがある
看護師の離婚で、意外と重たくなりやすいのが家の問題です。
看護師夫婦や共働き夫婦は、二人で家計を支えている分、家を買っているケースも少なくありません。
共有名義、ペアローン、そうなっていませんか?
このような状況ですと、どちらが住むのか、売却するのか。
離婚時にかなり揉めやすい部分です。

特に、住み続ける場合は複雑です。
感情的には「子どものために住み続けたい」と思っても、財産分与、残債、名義、支払能力が絡むと、気持ちだけでは決められません。
ここは早めに数字を出したほうがいいです。
評価額はいくらか。
ローン残高はいくらか。
売却した場合と住み続けた場合で、負担はどう変わるか。
このあたりを不動産会社や専門家に確認すると、判断がかなり具体的になります。
「何となく大丈夫そう」で進めると、離婚後の生活を重くしやすいところです。
養育費をもらえる前提で組みすぎると危ないことがある
養育費は大事です。
ただ、家計を考えるときは少し慎重さが必要です。
看護師は、夫婦の中で自分の収入が高いケースもあります。
その場合、相手との収入差によっては、思ったより養育費がもらえないことがあります。
もちろん、協議離婚でお互いが納得できる金額を決められるなら、それでいいんです。
ただ、話し合いが進まず、調停や裁判ベースの整理になると、想定とズレることがあります。

養育費は大事にしつつも、それが予定どおり入らなくても、即崩れない家計を先に作るほうが安全だと考えています。
希望を持つのは大事です。
でも、家計は現実的に考えていきましょう。
看護師の離婚で本当に大事なのは、働き方を感情だけで決めないこと
離婚前後は、感情が大きく揺れ動きます。
辞めたい、逃げたい、もう無理。
そう思うのは当然です。私も経験してきました。
ただ、働き方は、できるだけ感情だけで決めないほうがいいです。
私自身も、急性期の総合病院、クリニック、デイサービスと働く場を変えてきて、同じ看護師でも常識が全然違うと感じてきました。
急性期か慢性期か。
病院かクリニックか。
介護系か。
働く場所によって求められるものも、疲れ方も、家庭との両立のしやすさも変わります。
だからこそ大事なのは、「どこが正しいか」ではなく、今の自分は何を優先すべきかを整理することです。
- お金を優先する時期なのか
- 体力の持続性を優先する時期なのか
- 子どもの年齢や預け先を優先する時期なのか
- 自分の特性に合う分野を優先する時期なのか
この整理がないと、
「もっと働けばいい」
「資格があるんだから何とかなる」
で自分を追い込みやすくなります。
離婚前に見える化しておきたいこと
離婚前に、少なくとも次の5つは見える化しておくと、判断の質が上がります。

- 夜勤なしでも回る家計か
- 子どもの預け先と送迎動線が成り立つか
- 自分の地域で現実に選べる職場は何か
- 制度や手当が、いつ・どれくらい見込めそうか
- 家、保険、ローン、名義の整理が必要か
ここで大事なのは、理想ではなく、今の自分の条件で回るかを見ることです。
おすすめは、次の3場面を想像してみることです。
- 平日の朝
- 夜勤明け
- 子どもの体調不良や不登校など行けない
私自身が、起業することを決断できたのは実際に子どもたちが風邪で月の半分休んでしまったことがあったからです。
正社員でも手取り給与が10万円を切ってしまったため、生活していけないと思って覚悟が決まりました。そのあとは不登校になったこともありますし、そもそも親も自営で共働きのため、あまり頼れる状況ではなかったことから自分で収入を増やしていこうと、判断をしました。
自分だったら…を考えてみてくださいね。
まとめ
看護師は、離婚後の選択肢を持ちやすい職業です。
でも、だからといって
「看護師なら大丈夫」
とは言い切れません。
夜勤ができるか。
夜勤明けに休めるか。
子どもを見てくれる人がいるか。
地域に合う職場があるか。
制度のズレを吸収できる家計余力があるか。
離婚後の生活を左右するのは、資格の有無だけではなく、生活を回す条件が揃っているかです。
もし今、離婚を考えていて気持ちが揺れているなら。
大事なのは、勢いで自分を追い込むことでも、我慢を美徳にすることでもありません。
感情は感情として大切にしつつ、
働き方、お金、制度、子ども、住まいを分けて見える化する。
そのうえで、自分にとって回る形を選ぶことです。
看護師だから大丈夫、ではなく。
看護師である自分が、どの条件なら生活を崩さずにやっていけるのか。
そこまで見て初めて、離婚後の選択は現実的になります。

