2026年3月14日

「共感だけのカウンセリング」は実は危険って知っていますか?相談業をする人が知らないといけない支援の本質

記事

ここに見出しテキストを追加

相談を仕事にする人が増えている

副業や起業という言葉をよく聞くようになりました。その中で、「相談を仕事にする」という働き方に興味を持つ人も増えています。カウンセラー、コーチ、相談員、オンライン相談など、人の悩みを聞く仕事は在宅でも始めやすく、自分の経験を活かせるという理由から人気があります。実際にSNSを見ても、相談を仕事にしている人は年々増えているように感じます。

人の役に立ちたい。自分の経験を誰かのために活かしたい。そう思う人が増えていること自体は、とても素晴らしいことです。ただ、相談業を仕事にするのであれば、一つだけ最初に考えておいてほしいことがあります。

それは、「話を聞くこと」と「支援すること」は同じではないということです。

「話を聞くこと」と「支援すること」は同じではない

相談を受ける仕事というと、「人の話を聞くこと」が中心だと思われがちです。もちろん、誰かの話を丁寧に聞くことはとても大切なことです。話を聞いてもらえるだけで安心する人もいますし、孤独を感じている人にとってはそれだけでも大きな支えになります。

しかし、支援という視点で考えると、ただ話を聞くことと、本当に相手の問題に向き合うことは少し意味が違ってきます。相談の場では、表面的な出来事の奥にある感情や思考、背景となっている価値観など、さまざまな要素が絡み合っています。それらを整理しながら理解していくことが、本来の支援の役割です。

もし「共感すること」だけで終わってしまうと、安心感は生まれるかもしれませんが、問題の構造そのものは変わらないこともあります。

共感だけでは問題は解決しない

相談を受けるとき、多くの人が大切にしているのが「共感」です。つらかったですね、大変でしたね、と言ってもらえることは、相談者にとって安心感を生みます。

ただし、共感だけで終わってしまう支援には注意が必要です。SNSなどでもよく見られるのが、「被害者は悪くない」「加害者が悪い」という構図です。特にモラハラや毒親、職場の人間関係などのテーマでは、この対立構造が強くなりやすい傾向があります。

もちろん、傷ついている人の味方になることは大切です。しかし、被害者と加害者という構図だけで物事を見てしまうと、問題の背景や構造が見えなくなることがあります。

被害者と加害者の対立構造が固定される理由

実際の相談の現場では、加害者と呼ばれている側の人も「自分は被害者だ」と感じているケースが少なくありません。お互いが自分は傷つけられた側だと感じていると、関係は平行線のままになります。

相手が悪い。自分は被害者だ。この構図が固定されると、人間関係は硬直していきます。そしてそのまま新しい人間関係を築こうとすると、似たような問題が繰り返されることもあります。環境を変えても、相手を変えても、同じようなトラブルが起きてしまう。これは珍しいことではありません。

その背景には、人それぞれが持っている「認知のパターン」が関係しています。

支援者自身の認知の偏りが、支援を歪めてしまうことがある

人は誰でも、自分の経験や価値観を通して世界を見ています。つまり、完全に客観的な視点で物事を見ることはとても難しいということです。特に相談業では、自分が経験してきたことと似た話を聞いたとき、無意識に感情が動くことがあります。

被害者意識

例えば、自分が過去にモラハラを受けた経験があるとします。同じような相談を聞いたとき、相手に対して強い怒りや嫌悪感が出てくることがあります。その感情自体は自然なものですが、その状態のまま相談を聞いてしまうと、相手の状況を冷静に見ることが難しくなります。

加害者化

被害者意識が残ったまま支援をすると、無意識のうちに加害者を攻撃する構図が生まれることがあります。相手が悪い、あの人が加害者だ、という視点が強くなると、支援は対立を深める方向に進むことがあります。気づかないうちに、支援者自身が別の形の加害者になってしまう可能性もあります。

俯瞰

だからこそ、支援者には俯瞰する力が必要になります。俯瞰とは、感情に巻き込まれずに状況全体を見ることです。自分、クライアント、状況、関係性を少し離れた視点から見ることができると、対立構造に巻き込まれにくくなります。

本音と建前

俯瞰する力があると、本音と建前の違いにも気づきやすくなります。人は必ずしも本音をそのまま話しているわけではありません。怒りの奥に不安があることもありますし、強い言葉の奥に悲しみがあることもあります。表面的な言葉だけではなく、その奥にある感情や背景を見ることができるようになると、支援の質は大きく変わります。

実際の相談で見えてくる「言葉の奥の感情」

例えば、こんな相談がありました。

「夫の言い方がきついんです。いつも責められている気がして、顔色をうかがってしまいます。」

この話を聞いたとき、表面的には「相手の言い方が悪い」と感じるかもしれません。

しかし、話を丁寧に聞いていくと、その人が本当に苦しんでいたのは夫の言葉そのものだけではありませんでした。

きつい言い方をされたときに強く揺さぶられていたのは、

  • 否定された悲しみ
  • 劣等感
  • みじめさ
  • 自分には価値がないのではないかという感覚

でした。

ここを見ずに

「あなたは悪くない」
「そんなことを言う相手が悪い」

という支援だけをしても、その人の苦しさは変わりません。

なぜなら、問題の中心にあるのは
劣等感や無価値観だからです。

劣等感が強いと

  • 自分の意見を言えない
  • 相手に合わせてしまう
  • 圧の強い人の前で委縮する
  • 何でも抱え込んでしまう

という状態が起こります。

その結果、孤独感が強くなっていきます。

一方で、相手側にも別の構造があることがあります。

はっきりしない態度
何でも合わせる姿勢

それを見ていると、

  • イライラ
  • 諦め
  • 成長してほしいという思い

が生まれることもあります。

こうして、関係はさらにこじれていきます。

ここまで見えてきて初めて、問題の本質が見えてきます。

支援者が陥りやすい「投影」という心理

心理学では、自分の感情や問題を無意識のうちに他人に重ねてしまう現象を**「投影(Projection)」**と呼びます。
これは精神分析の創始者であるフロイトの理論でも説明されている、人間にとって自然な心理の一つです。

例えば、自分が過去にモラハラを受けていた経験がある場合、似た状況の話を聞いたときに強い怒りが出てくることがあります。そしてその怒りを通して、「相手が悪い」「あの人が加害者だ」という見方が強くなってしまうことがあります。

しかし、このとき起きているのは必ずしもクライアントの問題ではありません。
支援者自身の未消化の感情が反応している状態であることもあります。

この状態のまま相談を聞くと、支援はクライアントのためではなく、支援者自身の感情を処理する場になってしまう可能性があります。

だからこそ、支援者には自分の感情を俯瞰する視点が必要になります。

支援者に必要な「対話の技術」

では、こうした力はどうすれば身につくのでしょうか。そのために必要になるのが「対話の技術」です。

事実と解釈

まず大切なのは、事実と解釈を分けることです。例えば「上司が冷たい」という言葉があったとします。これは事実ではなく解釈です。事実として確認できるのは、「挨拶をしても返事がなかった」「会話が短かった」といった出来事です。出来事と意味づけを分けて考えることで、状況を整理しやすくなります。

感情の言語化

次に重要なのは、言葉になっていない感情を言語化することです。人は必ずしも自分の感情をうまく説明できるわけではありません。怒りの奥にある恐れや、不安の奥にある孤独など、言葉になっていない感情に気づくことで、本当の問題が見えてくることがあります。

仮説

相談を聞くときは、ただ受け身で聞くだけではなく、仮説を立てながら整理していくことも大切です。この人は何を恐れているのか。どんな未来を避けようとしているのか。こうした仮説を持ちながら話を聞くことで、問題の構造が少しずつ見えてきます。

人は誰でも認知の偏りを持っている

心理学や行動科学では、人は完全に客観的に物事を判断することはできないと考えられています。
人は過去の経験や価値観、環境の影響を受けながら物事を解釈します。

これを認知バイアスと呼びます。

例えば、

  • 自分の経験に似た話だけを強く感じてしまう
  • 自分の価値観を「正しい」と思いやすい
  • 相手の行動を決めつけて解釈してしまう

こうした認知の偏りは、誰にでも起こるものです。

しかし相談業では、この認知の偏りに気づかないまま話を聞いてしまうと、クライアントの問題ではなく、支援者の価値観を押し付けてしまうことがあります。

その結果、本来の問題とは違う方向に話が進んでしまうこともあります。

支援者が陥りやすい「共依存」という関係

相談業をしていると、もう一つ気をつけなければならないことがあります。それが共依存という関係です。共依存とは、相手を助けることで自分の存在価値を感じる関係です。

「この人を助けたい」「この人の力になりたい」という思い自体はとても大切です。しかし、その気持ちが強くなりすぎると、少しずつ関係のバランスが崩れていきます。相手の問題を自分が解決しなければいけないと思ったり、相手の苦しみを自分のもののように感じてしまったりすると、支援は伴走ではなく「背負う」ものになってしまいます。

自己犠牲の支援がバーンアウトを生む

相談業をしている人の多くは、責任感が強く優しい人です。そのため、「自分が何とかしなければ」「この人を助けなければ」という思いを抱えやすい傾向があります。

しかし、支援を自己犠牲の上に成り立たせてしまうと、長く続けることは難しくなります。感情を使い続けると、必ず消耗します。最初はやりがいだったものが、やがて疲れやすさや無力感、イライラといった形で現れることがあります。これがバーンアウトです。

共感疲労という現象

支援職の世界では、**共感疲労(Compassion Fatigue)**という言葉があります。
これはカウンセラー、看護師、ソーシャルワーカーなど、支援職の人に多く見られる心理的な疲労です。

人の苦しみに強く共感し続けることで、

  • 感情的な消耗
  • 無力感
  • イライラ
  • 支援への意欲低下

といった状態が起こることがあります。

これは「頑張りが足りない」わけではありません。
むしろ、責任感が強く、人に寄り添おうとする人ほど起こりやすい現象です。

だからこそ、支援者には

  • 感情に巻き込まれない視点
  • 問題を背負い込まない関わり方
  • 自分の状態に気づく力

が必要になります。

支援者の共依存チェック

次の項目で、当てはまるものはいくつあるでしょうか。

  1. 相手の問題を自分の問題のように感じてしまう
  2. 相手が変わらないと自分が無力に感じる
  3. 人を助けることが自分の価値だと思っている
  4. 相手の期待に応えないといけないと感じる
  5. 相手が苦しんでいると放っておけない
  6. 相手の問題について考え続けてしまう
  7. 相手に嫌われることが怖い
  8. 相談を断ることに罪悪感がある
  9. 相手のために自分の時間や体力を無理して使ってしまう
  10. 人の問題を自分が解決しなければいけないと思っている

複数当てはまる場合、共依存関係を作りやすい状態になっている可能性があります。支援を続けていくためには、支援者自身が健全な状態でいることがとても大切です。

リカバリセラピスト養成講座では「対話の技術」をトレーニングしている

ここまで読んでいただくとわかると思いますが、相談を仕事にするうえで一番大切なのは知識の量ではありません。大切なのは、どんな視点で人の話を聞けるかということです。

リカバリセラピーのセラピスト養成講座では、対話の技術を実践形式でトレーニングしています。具体的には、事実と解釈を分ける力、認知のパターンに気づく力、言葉になっていない感情を言語化する力、問題の構造を俯瞰する力、仮説を立てて対話を深める力などを繰り返し練習していきます。

こうした力は知識だけでは身につきません。トレーニングを通して、自分の認知の偏りに気づき、俯瞰する視点を育てていくことが必要になります。この対話の技術は、相談業だけでなく家庭や職場など、さまざまな人間関係の中でも役立つものです。

相談という仕事に関わりたい人や、支援の質を高めたいと感じている人にとって、対話の技術を学ぶことは大きな力になるはずです。もし興味があれば、リカバリセラピーの講座についてもぜひご覧ください。

カウンセリングでは変わらない・認知や思考のクセを修正し、繰り返す問題を断ち切る。

30分で根本問題を理解できるスキルを体験していきます。

最新の記事もチェック

© 一般社団法人 FP看護師パートナー協会